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リハビリ室コラム/Rehabilitation Column

第9回日本スポーツ理学療法学術大会 参加記
横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 平山公佑(理学療法士)

(令和4年12月)

第9回日本スポーツ理学療法学術大会が2022年12月10・11日に開催されました。新型コロナウイルス感染症拡大後初めての対面式の開催となり、対面ならではの積極的な質疑応答が行われました。
今大会のテーマは「コンピテンシーの科学的探求」。コンピテンシーとは「職務や役割において優秀な成績を発揮する行動特性」とされています。効果を出すための理学療法の探究ということです。その為の最新の知見、各個人の研究を目の当たりにできる大変有意義な機会となりました。

当センターからは5名の理学療法士及び理学療法助手が発表いたしましたので、ご紹介いたします。

小林 優理亜「ジュニア器械体操選手における外傷・障害の実態と性差」

ジュニア器械体操選手36名を対象に、外傷・障害発生状況に関するアンケート調査を行いました。
回答から外傷・障害保有率、重度の外傷・障害保有率、部位ごとの外傷・障害保有率、重症度(0:問題なし、100:スポーツ活動不可)を算出しました。その結果、外傷・障害保有率は全体65.9%で多くの選手が外傷・障害を抱えながら練習に参加していることが明らかとなりました。男子は女子に比べ、外傷・障害保有率、重度外傷・障害保有率、重症度ともに有意に高かったです。部位は全体で腰・手→踵、男子で手→腰→足、女子で踵→膝→腰の順に怪我を患っている結果となりました。今後、男女各々に好発する外傷・障害に応じた予防的取り組みが必要ということがわかりました。

本学会は3年ぶりの対面での開催となり、私自身は対面で初めての学会発表でした。また、他院の先生方から貴重なご意見をいただくこともでき、とても有意義な経験となりました。私の研究テーマでもある外傷・障害予防について多くの演題発表があり、予防のためには様々な観点から物事を捉え、考える必要があると感じました。本学会で得た知見を今後の患者診療や現場活動、研究活動に生かし還元できるよう精進して参りたいと思います。今回研究にご協力いただいた全ての方々に感謝申し上げます。

佐々木翔平「月経周期中の女性ホルモン濃度の変動がジャンプ着地動作時の足部アライメントに及ぼす影響について」

月経周期中の女性ホルモン濃度の変動がジャンプ着地動作時の足部アライメントに及ぼす影響および女性ホルモン濃度の変化量と足部アライメント変化の関係性について検討しました。結果は、月経周期における卵胞期後期に後足部外がえし角度は有意に増加しました。また、プロゲステロン濃度変化量とジャンプ着地動作時の足部アライメントの間に有意な相関を認めました。そのことから、月経周期中にジャンプ着地動作時の足部アライメントが変化することが明らかとなりました。研究内容の臨床応用方法について発表時間内外にご質問をいただき、改めて研究結果を公表し直接ディスカッションすることの重要性を感じた大会となりました。

田中大夢「高校生年代野球選手の腰痛と脊柱アライメントの関連についての検討」

高校野球選手の腰痛は、肩・肘と同様に多くの選手が悩まされる問題です。高校野球選手において、腰痛を抱えている選手、腰痛を経験したことがある選手、腰痛を経験したことがない選手に分類して、矢状面上の姿勢と股関節の柔軟性などを比較しました。柔軟性や腰部の姿勢には差がありませんでした。差が見られたのは、年齢、立位姿勢での脊柱全体の後弯角度、第9-第10胸椎間の角度でした。今後は、腰痛と、捻りなどの水平面上の姿勢や柔軟性との関連を明らかにしていきたいと考えています。

今 花夏「小・中・高校年代におけるスポーツの早期専門化傾向に関する調査報告〜大学生を対象とした後ろ向き研究〜」

幼少期から1つのスポーツのみを行うスポーツ早期専門化は外傷・障害リスクを高めるとされています。本研究は、日本人大学生を対象に、小学校から高校までのスポーツ専門化度、既往歴の関連性について検討しました。結果として、年代が上がると1つのスポーツのみ行う人の割合が高くなりました。しかし、本研究では、外傷・障害の有症率には専門化度間で有意な差はみられませんでした。年代が上がるにつれて専門化度が高くなった背景には、本邦において、中学生以降で部活動が始まるため、他のスポーツを続け難い環境となることも要因であることが考えられます。専門化度と外傷・障害との関連について、スポーツ種目別や、早期専門化の長期的な影響を検討する必要と考えています。
今年度の学会参加は2度目となり、学会の雰囲気に慣れ、学会を有意義なものにすることができました。本学会はスポーツに関わる多くの理学療法士が参加しており、研究・臨床・現場で活躍されている先生方がたくさん参加されていたり、同じ年代の理学療法士も発表していたりと、とても良い刺激をもらうことができました。前回の学会も含め、今回の学会の経験を今後の診療に活かしていきたいと思います。

彼島奈々「ハンドボール競技中における高衝撃動作と性差の検討」

ハンドボール競技中における高衝撃動作を加速度計を用いて抽出し、高衝撃動作の頻度と性差を検討しました。高衝撃動作の頻度は、女子より男子の方が高いという結果となりました。男子では速攻に関連したプレーでの高衝撃が多く、その際に切り返し動作が多くなったことが示唆されました。女子では、速攻に限らず高衝撃動作が多くみられ、ストップ動作を多用する特徴がみられました。
今回の学会では、初めて口頭で発表をさせていただきました。質疑応答では、高衝撃の定義についての質問などをいただきました。緊張しており適切な回答ができたかどうかがわかりませんが、今回の経験を次の学会発表に繋げたいと思います。今後もハンドボールの研究に邁進し、競技普及・障害予防に努めていきたいと思います。

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