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リハビリ室コラム / Rehabilitation Column

第11回日本スポーツ理学療法学会学術大会 参加期リハビリテーション科 平山公佑(理学療法士)2025年1月25、26日

2025年1月25、26日の2日間にわたり第11回日本スポーツ理学療法学会学術大会がパシフィコ横浜ノースにて開催されました。当科科長の鈴川仁人が大会長を勤め、「多様性とスポーツ理学療法」というテーマのもと、オリンピック及びパラリンピックなどの国際総合競技大会での選手サポートや、理学療法の地域性やサービスについて多くの議論・報告が行われました。発表演題数・参加者数はともに過去最高を記録し、大変盛会となりました。 当科からも、数多くの理学療法士が研究発表を行いましたので、以下に報告いたします。

北海道大学学術交流会館
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唄 大輔:膝前十字靭帯再建術後3ヶ月時点におけるRate of Force Development の年代別検討

北海道大学学術交流会館

膝前十字靭帯再建術後の筋力に関する発表をしました。術後の筋力に関しては年齢による差異があると言われておりますが、本研究では筋力の絶対値には年代別に差がありませんでしたが、神経筋因子には年代別に差を認め、今後のリハビリプロコトルを再考する一助となりました。聴講者からは方法に関する質問や今後に繋がる討論ができました。今後ともスポーツ医学の発展のため精進してまいります。

柴田真子:女子陸上競技選手における月経周期と慢性障害症状との関連

北海道大学学術交流会館

本研究では、女子陸上競技選手の月経周期と慢性障害症状の関連を調査しました。大学にてスポーツを専門に行っている女子選手10名を対象に、約2か月間、基礎体温や月経、慢性痛の状態を記録し、OSTRC質問紙を用いて評価しました。分析の結果、月経周期間で慢性痛の変化に有意な差はみられませんでした。これは、ホルモン分泌の個人差が影響している可能性があり、長期的な個別の傾向把握の重要性が示唆されました。

大平葉奈:女子新体操選手における月経周期と慢性障害症状との関連

北海道大学学術交流会館

新体操選手の慢性的なケガの症状と月経周期の関係を調査しました。経周期情報(基礎体温・経血日・排卵日)、慢性痛についてはOSTRC質問紙を用いて3か月間のデータを収集しました。その結果、月経中や黄体期中期にコンディション不良の傾向がありましたが有意差は出ませんでした。新体操選手においては排卵期に柔軟性が増加することが疼痛の増悪因子に結びつかない可能性が示唆されました。今後は、競技特性を加味してより詳細な研究をしていきます。

小林優理亜:ジュニア女子体操競技選手の腰部障害に対する柔軟性向上による予防効果の検証

北海道大学学術交流会館

小中学生女子体操競技選手の腰部障害に対し柔軟性向上を目的としたストレッチングを実施し、予防効果を前向きに検討しました。ストレッチングは股関節伸展可動域拡大を目的とした腸腰筋、大腿四頭筋のストレッチング、肩関節屈曲可動域、胸椎伸展可動性向上を目的とした広背筋のストレッチングの2種類を各30秒3セット、週6日で練習前に実施しました。13週間の予防介入により、全体の外傷・障害保有率と腰部外傷・障害保有率が減少する可能性が示唆されました。また、広背筋に対する改善効果が認められました。 本学会を通して新たな知見を得ることができ、自分自身の知識や考えを広げることができました。自身の研究や学会で得た知見を診療や現場での活動等にも活かし、サポートさせていただく皆様の力になれるよう今後も精進して参りたいと思います。

岡崎美琴:短時間のスタティックストレッチングがパフォーマンスに与える効果と性差の検討

北海道大学学術交流会館

短時間のスタティックストレッチングがパフォーマンスに与える影響の性差を検討しました。30秒間のスタティックストレッチングにより、男性では足関節底屈最大トルク、Rate of torque developmentおよび片脚countermovement jumpジャンプ高が低下しました。しかし、女性では有意な差はありませんでした。したがって、スポーツ前のウォームアップなどで短時間のスタティックストレッチングを指導する際には、性差を考慮してウォーミングアッププロトコル考案する必要があることを示しました。女性アスリートや性差に関する専門家の先生方と多くの意見を交わすことができ、 貴重な経験となりました。本学会で得た知見を今後の患者診療や現場活動、 研究活動に還元できるよう精進して参ります。

来住野麻美:【股関節つまり感を有するバレエダンサーの三次元動作解析における一考察】

北海道大学学術交流会館

バレエダンサーにおいて股関節痛は一定数発生しているが、発生メカニズムの解明には至っていません。そのため、本研究では股関節に負担が集中するバレエ動作の特徴を明らかにすることを用いて三次元動作解析による分析をおこないました。股関節前面につまり感を有するバレエダンサーにおいて、ゆっくりとした脚の引き上げ動作では健側に比べて患側の股関節屈曲・骨盤後傾が大きく、素早い脚の振り上げ動作では股関節外旋・骨盤後傾が不足していたことがわかりました。今後は被験者数を増やし特徴を明らかにしていきたいと思います。

上村杏奈:バレエダンサーにおける側彎症はプロレベルに多く胸椎回線可動域に影響を与える

北海道大学学術交流会館

本研究は、バレエにおける側弯症と胸椎回旋可動域(TR)の関連を調査し、予防対策構築の一助とすることを目的としました。146名のバレエダンサーを対象に脊椎X線でCobb角を測定し、TRを評価した結果、34%に側弯症が確認され、競技レベルが高いほど有病率が高いことが分かりました。また、側弯症群はTRが有意に低下していました。胸椎回旋可動域の改善が側弯症予防に寄与する可能性が示唆され、早期の評価と予防策の導入の重要性が示唆されました。

田中大夢:学童期野球選手に対する投球動作指導による肘外反トルクの変化と動作的特徴の検討

北海道大学学術交流会館

当センターで毎年開催している「ジュニアベースボールプログラム」ではトレーニングの前後で投球動作の撮影と球速、肘外反トルク(肘のけがにつながる負担)を測定しています。 トレーニングを行った後は、ほぼ全ての選手で球速が上がりますが、肘外反トルクについては上がる選手と下がる選手がいます。「球速は上がり、肘外反トルクが下がる選手(=ケガなく、うまく投げる選手)には、トレーニングによってどのような投球動作の変化が起きたかを調べました。今回の検討では大きな差は見つかりませんでしたが、日本中の野球選手に関わる理学療法士の方に今後のヒントになるようなコメントをいただきました。今後も野球選手がケガなく、上手になるために更なる研究を継続していきます。

今花夏:球技別スポーツ専門化の状況および外傷・障害との関係

北海道大学学術交流会館

今回は、幼少期から1つのスポーツのみを行う「スポーツ早期専門化」について球技別に検討しました。種目間に外傷・障害との関連は見られませんでしたが、専門化の過程が競技により異なることがわかりました。今後は競技特異的な外傷・障害との関連を検討する必要があると考えています。今後はさらに理学療法分野に関して貢献できるように研究を進めていきたいと思います。

平山公佑:膝前十字靱帯再建後の再生半腱様筋腱に対する弾性率の回復過程の解明

北海道大学学術交流会館

前十字靱帯を再建した患者さんに対して、採取後に再生してきた腱の強さを剪断波エラストグラフィーを用いて測定しました。結果は術後3ヶ月と6ヶ月には差が見られませんでしたが、平均して、健患比は45%程度でありました。再生した半腱様筋腱の弾性率の回復過程は未だ不明です。今後は研究対象期間を延ばし検討していくとともに、各種身体機能との関係も調査していきたいと思います。

佐野佑斗:ハムストリング筋持久力を殿部挙上速度で評価する高速片脚ブリッジテストの筋活動特性の検証

北海道大学学術交流会館

この研究はハムストリング肉ばなれ予防に向けた研究であり、リスク因子の一つである筋持久力を、開発したテストを用いて30秒という短い時間で評価できることを明らかにしました。本演題は、奨励賞を受賞することができました。この結果を用いて肉ばなれの損傷リスク検出・競技復帰のための機能的な基準作りを確立し、日々の臨床に貢献できるように精進いたします。

恒川菜織子:筋機能測定装置の標準保存トルク曲線を用いた膝伸筋群 Rate of Force Development の信頼性

北海道大学学術交流会館

Rate of force development (RFD)は単位時間あたりに発揮された力のことを指し、RFDは簡便に算出できないのが現状です。本研究は内挿補間されたデータと1,000Hzのデータから算出されたRFDの信頼性を明らかにすることを目的としました。結果は、RFDは各時間ともに高い一致度を示しました。今後は膨大な筋力データからRFDを後ろ向きで算出することで、前十字靱帯再損傷やRFDの有用性の解明の一助となる可能性があります。
本学会はスポーツ理学療法の臨床や現場での研究が多く、とても学びの深い2日間となりました。今回の経験を研究や臨床に活かし、皆様に貢献できるよう精進していく所存です。