第30回 日本臨床スポーツ医学会学術集会 参加記
「第30回 臨床スポーツ医学会学術集会」が2019年11月16日,17日にパシフィコ横浜にて開催されました。今学会のメインテーマは「Generation to generation-次の世代へ-」であり、スポーツ医学のこれまでとこれからについて様々な視点からの講演がありました。2019年はラグビーワールドカップ、2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、大きな変革を遂げることが予想されます。本学会でも大規模大会・国際大会について多くのことを学ぶ貴重な機会となりました。
当センターのリハビリテーション科からは松田匠生、青山真希子、窪田智史、堤省吾が口述発表をしましたので簡単にご紹介します。
松田 匠生「第5中足骨不整像を有する選手とその予後に影響する因子―エコー所見と身体機能に関する前向き研究-」
第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)はサッカー選手に多く発生しますが治療は難渋することもあり、予防することが重要であります。サッカー選手に対して、超音波による骨の所見と身体機能をシーズン前に評価し、1年の間に第5中足骨疲労骨折(Jones骨折)に至った選手と骨折に至らなかった選手の特徴を比較しました。この結果、超音波での不整像がある選手のうち、つま先立ちの時に外側に荷重する傾向が完全骨折の発症に関わる可能性が示されました。
青山 真希子「中学校における運動器疾患予防の取り組み 第2報:前向きコホート研究で明らかとなった中学生の腰痛の疫学的特徴」
窪田 智史「中学校における運動器疾患予防の取り組み 第2報:前向きコホート研究で明らかとなった中学生の膝(ひざ)痛の疫学的特徴」
我々は現在、健康増進・スポーツ傷害予防センターの事業で中学生の運動器疾患の予防に取り組んでいます。市立中学校2校に毎月のアンケートにご協力いただき、ひざ痛と腰痛の発生状況を調査しました。結果としては1年間で6.9%の生徒が腰痛を、9.9%の生徒が膝痛を発生し、腰・膝とも1,2年生に高い割合で起こりました。運動部に所属している生徒の方がひざ痛は多く生じましたが、腰痛に関しては運動部に所属していない生徒にも多く生じており、日常生活も含めた包括的な予防のアプローチが必要であることが示唆されました。
堤 省吾「ハムストリングス肉離れ症例の後方視的検討―罹患筋と競技復帰時期に着目して―」
ハムストリングスは内側・外側に分けられ、肉離れはどちらも起きることがあります。また、肉離れは走って起こるタイプ、接触プレーやダンスなどで過剰に引き伸ばされて起こるタイプなど異なる受傷機転があります。肉離れは再発することが多く、治療においては再発予防が鍵となります。的確な予後予測をするために、今回は内側・外側に分けて競技復帰時期に関する検討を行いました。結果としてはジョギングが再開できた時期は差がありませんでしたが、内側を受傷した選手の方が競技復帰までに長く時間がかかることが分かりました。過去の報告と比較すると復帰時期は早期であり、種目や受傷機転の違いが関わっている可能性が考えられました。