第5回日本スポーツ理学療法学会学術大会 参加記
「第5回日本スポーツ理学療法学会学術大会」が12月5・6の2日間、日本大学文理学部 百周年記念館で行われました。本学会は、スポーツに携わる理学療法士を中心に2日間で約850名が参加し、当科のスタッフも全員で参加しました。今回大会は「スポーツ理学療法の可能性」をテーマに、国内外のスポーツ理学療法の現状とトピックスに関する講演、女性の活動を推進するための、またCore competenceを取り上げたシンポジウム、約100題の演題発表等が行われました。
当センターのリハビリテーション科からは鈴川仁人、清水結、高橋佐江子、玉置龍也、坂田淳、中田周兵、菊川大輔、青山真希子が発表を行いましたので簡単にご紹介します。
鈴川仁人「横浜市におけるスポーツ医科学に基づいた地域貢献」
診療・研究・教育・スポーツ現場という4つの観点から、当センターと横浜市との関わりについて講演を行いました。当センタークリニックでは、横浜市民のスポーツ活動を支援するため、患者さんの診療だけでなく、怪我に関する研究や、理学療法士の育成、地域のスポーツイベントやプロチームのサポートといった様々な事業を行っています。スポーツ理学療法によって出来る地域貢献について、これらの事業を紹介しました。
清水結「多くの女性理学療法士がスポーツ現場で活躍するために」
高橋佐江子「女性スポーツ理学療法士としての活動と今後の展望」
現在、日本のスポーツ界の第一線で活躍する女性理学療法士である二人が、これまでの経歴や、現在の活動内容、スポーツに携わる女性理学療法士の現状と課題についてシンポジウムで発表をしました。総合討論では、スポーツに携わる若手女性理学療法士の育成について議論がされ、二人の当センタークリニックでも働いていたこれまでの経験から、頼ることのできる仲間を見つけることや、得意分野を見つけ、挑戦することの大切さなど、女性に限らず非常に参考になる内容でした。
発表をする高橋理学療法士と清水理学療法士
玉置達也「ランチョンセミナー:アスリートに対する物理療法を活用した治療の実践」
スポーツ障害の治療に対して、物理療法の作用や活用、物理療法の利点や欠点、運動療法との併用による可能性、各種物理療法のエビデンスについての発表を行いました。また、近年注目を集めており、当センタークリニックでも導入している「拡散型ショックウェーブ」について実技を交えながら、物理療法を活用した治療の実践についても紹介しました。物理療法の作用を治療の要素によって分類し、適応について整理できる内容でした。
坂田淳「筋骨格シミュレーションによる学童野球線ににおける肘内側障害発生の危険因子の検討」
学童野球選手を対象に、SMMという靱帯に加わる張力を推定することができる筋骨格シミュレーションソフトを用いて、肘内側障害発生の危険因子を検討しました。結果は、肘内側障害を発生した学童野球選手の方が、怪我をしなかった学童野球選手に比べ肘内側側副靱帯に加わる前部繊維の最大張力と内側上顆に加わる力積の総量が大きいということが明らかになりました。
また、閉会式ではこの発表が本学会の奨励賞という名誉ある賞を受賞し、表彰されました。
中田周兵「膝前十字靱帯再建術前の異常歩行が歩行動作中の下肢キネマティクスに与える影響」
前十字靱帯損傷と診断された方を対象に、手術前の異常歩行が手術後の歩行に及ぼす影響について検討しました。結果は手術前にみられた膝の内反角度(膝がO脚方向)の増加が手術後にはみられませんでした。また、手術前にみられた足関節の外旋角度(つま先がガニ股方向)の増加は、手術後も同様にみられました。そのことから、手術前の膝内反角度の増加は靭帯損傷による不安定性の影響が考えられ、手術前にみられた足関節外旋角度の増加は手術後の歩行にも影響を及ぼしている可能性が示されました。
発表をする坂田理学療法士と中田理学療法士
菊川大輔「半腱様筋腱を用いたACL再建術後における再生半腱様筋腱の受動張力」
半腱様筋腱を用いてACL再建術を行った方を対象に、術後に再生した半腱様筋腱の受動張力を超音波剪断波エラストグラフィという装置を用いて推定しました。結果は再生半腱様筋腱の受動張力は術後の経過と共に対数関係に回復するということが得られました。そのことから再生半腱様筋腱の受動張力の評価が、ACL再建術後の術後プロトコル設定の指標として有用である可能性が示されました。
青山真希子「高校部活動選手におけるコンィデション実態および時期特性」
当センターで事業として行っている、高等学校に訪問しての部活動選手の身体機能やコンディション相談の実態と時期特性を調査しました。結果は、相談が最も多かったのは4月、次いで5月であり、「運動ができない」「日常生活にも支障がある」という状態の選手は6月に最も多いということが明らかになりました。高校部活動選手は、入部や引退、新チームの始動などのイベントによってコンディションの状態が変化しており、時期に対応したコンディショニングが必要であることが示されました。
発表をする菊川理学療法士と青山理学療法士
次回も来年の同時期に日本スポーツ理学療法学会は開催されます。本学会は、我々が専門とする領域の学会です。来年度も日頃の診療や、地域での取り組みに活かすことの出来る内容の演題を当センターから多く発表できればと思います。