第52回日本理学療法学術大会 参加記
「第52回日本理学療法学術大会」が5/12-14の3日間に渡り,幕張メッセ・東京ベイ幕張ホールにて開催されました。本学会は年に1度,日本理学療法士協会主催で開催されているものであり,今回の学会テーマは「理学療法士の学術活動推進」でした。今年は,1,700を超える演題数が口述・ポスターにて発表され,参加者は各々の専門としている分野の発表を聴講していました。
学会は,普段臨床に励むなかで,われわれ理学療法士が科学的根拠をいかに追求していくかをテーマとした講演・演題が多くみられました。なかでもスポーツに関しては,競技復帰を目指す際のスポーツ科学の利用についてのシンポジウムが行われ,興味深く聴講いたしました。一概に「痛みなく動けるようになった」だけではなく,段階的に身体機能評価や動作分析を実施し,再受傷予防まで見据えた,かつ科学的根拠に基づいたリハビリテーションが重要であるという内容でした。また,スポーツ競技により復帰までのプロセスが異なる点も紹介されており,たいへん勉強になりました。
当センターリハビリテーション科からは,鈴川仁人,坂田淳,堤省吾が参加しましたので,簡単にご報告いたします。
●鈴川仁人(座長)
足関節・足部のスポーツ障害に関する口述演題が集まり,活発なディスカッションが行われました。
●坂田淳「投球障害予防への理学療法士としての関わり‐学童期野球選手を対象としたメディカルチェックの結果から‐」(パネリスト)
当センターで実施しているメディカルチェックにより,学童期野球選手の約4割は肩や肘の既往を有しており,また前向き調査の結果,肘内側障害は22%に発生していることが明らかとなりました。これらの対策として予防プログラム「YKB 9+」を作成し,介入した結果,肘内側障害の発生率は1/3まで減少しました。本結果は投球障害予防を目的とした検診が有用であることを示しました。今後は地域の枠を超えた大規模な障害調査を実施し,早期発見,早期治療を行う必要があります。
●堤省吾「股関節外転運動の反復は大腿筋膜張筋と腸脛靭帯の硬度上昇を継続させるか」(ポスター)
腸脛靭帯は収縮作用のある大腿筋膜張筋と連続性をもちます。腸脛靭帯炎は長距離ランナーに多く発症することから,反復的な大腿筋膜張筋の収縮による大腿筋膜張筋と腸脛靭帯の硬度を検討したところ,運動後どちらも上昇がみられました。さらに経時的に測定していくと,運動後24時間においても大腿筋膜張筋および腸脛靭帯の硬度上昇は残存していました。本結果より,腸脛靭帯炎は大腿筋膜張筋の収縮を起因とした硬度上昇が影響している可能性が示唆されました。
来年は合同学会ではなく各分野に分かれ,スポーツ理学療法学会の単独開催となります。2018年5月19-20日に第5回日本スポーツ理学療法学会学術大会が開催されます。来年も参加し,自己研鑽に励みたいと思います。