第40回 日本整形外科スポーツ医学会学術集会 参加記
9/12-14の3日間、今年6月に完成したばかりの東京「虎ノ門ヒルズ」にて『第40回 日本整形外科スポーツ医学会学術集会』が開催されました。また今回は、「第12回 日韓整形外科スポーツ医学会」も併催されました。当センターからは整形外科医師および理学療法士が参加しました。
本学会のテーマは、2020年に東京オリンピックが開催されることが決定したこともあり、「今、スポーツ医学に求められるもの −2020に向けて−」でした。おそらくは今の中学生・高校生・大学生が主体となるであろう6年後のオリンピックで、スポーツ医学でできることは、「スポーツ外傷・障害の予防や治療」であり、今回はその内容のシンポジウム10題、パネルディスカッション3題が企画され、加えて多くの口述とポスターの一般演題が発表されていました。今回の学会は、外科的な内容だけでなく、これまで以上に予防や保存治療、スポーツ栄養・心理・脳科学・コンディショニングなどの他職種にもスポットが当てられていました。メディカル領域はもちろんのこと、よりコメディカルの領域においても学んでいく必要性を強く感じました。
当センターからは、清水邦明医師(整形外科)、赤池敦医師(整形外科)、鈴川仁人(理学療法士)、塩田真史(理学療法士)、坂田淳(理学療法士)の5名が発表致しました。発表内容を以下に簡単に紹介致します。
清水邦明 「当施設における初回前十字靱帯再建術後の再断裂ならびに対側損傷例の検討」
当センターにおける前十字靱帯再建術後のスポーツ選手の二次損傷例について詳細に検討した発表内容で、再断裂/対側損傷ともに6.0%であり、対側損傷例は初回手術時年齢が再断裂例より低年齢であり、復帰後も競技動作習得も含め定期的な長期フォローが必要であると報告しました。
赤池敦 「少年野球選手における肘内外側超音波異常所見と疼痛との関連」
当センターで実施している少年野球選手のメディカルチェックの報告であり、症状の有無に関わらず超音波検査を行い、肘内側上顆と上腕骨小頭の異常所見と現在および過去の疼痛との関連を検討しました。内側上顆の異常所見と疼痛には関連が見られましたが、上腕骨小頭と疼痛には関連は見られませんでした。上腕骨小頭に比べ内側上顆では骨軟骨以外にも素因が考えられると報告しました。
鈴川仁人 「エビデンスに基づく前十字靱帯再建術後リハビリテーション」
「前十字靱帯再建術後アスリートへのチームサポート-受傷前より高いレベルでの復帰を目指して-」という題のシンポジウムで、シンポジストとして発表されました。このシンポジウムでは、大学女子体育会バスケットボール選手の前十字靱帯損傷を想定し、整形外科医、理学療法士、トレーナー、管理栄養士、スポーツ心理学の多方面からのチームサポートという内容でした。当センターで実施しているリハビリを術後早期から復帰まで4段階の時期に分けて、各時期のポイントを科学的根拠に基づいて報告しました。
塩田真史 「小学生サッカー選手における脛骨粗面のエコー所見と臨床所見の経過について」
小学生サッカー選手を対象にサッカー少年に多いオスグッド病の予防のため縦断的なメディカルチェックを実施し、超音波診断装置での異常所見と臨床所見との関係を検討した発表内容で、骨の成長段階別の所見と臨床所見との間に有意差を認め、オスグッド病予防のためにも臨床症状だけでなく定期的な超音波診断を実施し、適切な指示を行うことが重要であると報告しました。
坂田淳 「少年野球選手における肘内側障害の危険因子に関する前向き研究」
先に述べた少年野球選手のメディカルチェックに参加した選手のうち1年間追跡可能であった266名を対象(肘痛既往歴は除外)に肘超音波検査、全身可動域、筋力、姿勢、バランス、投球フォームの検討を行い、3ヶ月ごとに検査を実施し障害発生の有無を調査した研究で、肘内側障害の初発率は22.2%、胸椎後彎角・肩内外旋トータル可動域・非投球側股内旋制限・肘下がりが肘内側障害発生に関与していたと報告しました。
今回の学会は韓国との学会の併催ということもあり、海外からも多くの先生方がいらっしゃっていました。またスポーツ医学の分野に医師だけでなく理学療法士やアスレティックトレーナー、脳科学者や心理学者や管理栄養士といった多方面からの発表もあり、スポーツ医学を取り巻く環境が2020年のオリンピックに向けて大きく変わってきているのではないかということ感じました。
来年度は京都で開催される予定で、毎年徐々に学会に医師だけでなく他職種の発表やシンポジウム、パネルディスカッションが増えてきている印象があります。何と言ってもオリンピックのために今何ができるのかというところが焦点になっていくのではないかと思います。