実践ストレッチング
【静的ストレッチングで毎日を軽やかに】
ストレッチングは、運動前後のウォーミングアップやクーリングダウンなどに取り入れられています。筋肉を伸ばすことにより、筋肉の柔軟性が回復するとともに血行が良くなり、その結果、筋肉の疲労回復や筋肉・腱・靱帯・関節の障害を予防するなどの効果が期待できます。 ストレッチングには、動的なものと静的なものがありますが、このシリーズでは静的ストレッチングを紹介していきます。主に運動後におこなうクーリングダウンに適したストレッチングになります。
1.加齢による柔軟性の低下
右下のグラフは、当センターのSPS(スポーツ版人間ドック)から得られたデータで、年代別の柔軟性テスト(長座位体前屈)の記録を表したものです。年齢を重ねるとからだの柔軟性が低下しやすい傾向にあることがわかります。 筋肉の柔軟性が低下すると本来の関節の可動域が制限されて、関節の動きが小さくなります。これは『ロコモティブシンドローム(参照:日本整形外科学会HP、横浜市スポーツ医科学センターHP)』の原因にもなり、転倒によるケガのリスクを高めてしまう恐れがあります。
2.安全・効果的にストレッチングをおこなうために
加齢に加え、仕事や家事を含む毎日の生活やスポーツによる疲労など、日常の様々な生活習慣が筋肉の柔軟性を低下させる原因になることもあります。筋肉が無理なく正しく機能できるように、本来の関節の可動域を維持・改善することが重要になります。
今回は、静的ストレッチングを安全に、且つ、効果的におこなうための3つのポイントを紹介したいと思います。
(1)からだを温めておこないましょう
筋肉は温かいと伸びやすく、冷えると伸びにくくなる性質があります。前もって軽い運動などでからだを温めてから静的ストレッチングをおこなうと良いでしょう。また、お風呂上りも筋肉が温まっているので、静的ストレッチングに適しています。
(2)ゆっくり、リラックスしておこないましょう
静的ストレッチングの動作中、勢いや反動をつけて筋肉を伸ばそうとすると、意思とは逆に筋肉を収縮させようとする防衛機能が働き、筋肉を効果的に伸ばすことができません。また、動作中に息を止めることも筋肉の収縮や血圧の上昇を招き、からだへの負担になります。
(3)毎日おこないましょう
静的ストレッチングによる柔軟性の効果は、すぐに得られるものではありません。日々の積み重ねが大切です。入浴後や就寝前はもちろん、仕事や家事の合間など、日常生活の習慣の一部として取り入れましょう。
3.ストレッチング紹介
以下のポイントも考慮しながら実施しましょう。
- リラックスできる安定した姿勢でおこなう
理由:グラグラと安定しない姿勢では、リラックスできません。座った姿勢や寝た姿勢がオススメです。立ってふらつく場合は、壁や椅子に手をついておこないましょう。 - ストレッチング中は呼吸を止めない
理由:血圧の上昇や神経の興奮が起こり、筋肉のリラックスを妨げてしまいます。呼吸を止めずにおこないましょう。 - 伸ばしている筋肉を意識する
理由:人により筋肉の伸びを感じる姿勢は微妙に違います。写真を真似る中で、自分に合った姿勢を探して効率的に筋肉を伸ばしましょう。 - 反動をつけずにじんわりと筋肉を伸ばす
理由:反動をつけるとケガや筋肉をリラックスしにくくさせる原因になります。力ずくではなく、ゆっくりとおこないましょう。 - 伸ばす(動かす)範囲は伸びを感じるところまでにする
理由:痛みを感じるほど無理に伸ばそうとすると、筋肉の伸びが制限されてしまったり、逆に縮もうと力が入ってしまいます。伸びを感じたら、その姿勢で10~20秒静止しましょう。
ご利用上の注意 ~必ずお読みください~
ストレッチングを実施する前に、下記の事項をお読みいただき、内容を十分に理解したうえでご活用いただきますようお願い申し上げます。
(1)太ももの裏(ハムストリングス)
ハムストリングとは?
太ももの後ろにある筋肉です。半腱様筋(はんけんようきん)と半膜様筋(はんまくようきん)、そして大腿二頭筋(だいたいにとうきん)の筋群を総称してハムストリングスと呼びます。脚を後ろにあげる働き(股関節伸展)と、膝を曲げる働き(膝関節屈曲)をします。
ランニングやジャンプなど、多くの場面で使われます。
肉離れなどの傷害が起こりやすい筋肉です。
ケガ予防のためにも、よくストレッチングをしましょう。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【注意】
座位の場合
(2)おしりの横(中臀筋:ちゅうでんきん)
中臀筋とは?
おしりの横にある筋肉です。脚を横にあげる働き(股関節外転)をします。また、歩行中に体重が片足にかかった際、逆側のおしりが下に落ちないように支えます。
日常的によく使われる筋肉で、特にサッカーやバスケットボールなどの方向転換を多くするスポーツでは酷使されます。 運動後などは、よくストレッチングをしましょう。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【注意】
(3)お腹の側面(外腹斜筋:がいふくしゃきん・内腹斜筋:ないふくしゃきん)
外腹斜筋(がいふくしゃきん)・内腹斜筋(ないふくしゃきん)とは?
お腹の側面(左右のわき腹)にある筋肉です。外側に外腹斜筋があり、その深層に内腹斜筋があります。体を横に曲げる(腰椎の側屈)ときや捻ったりする(腰椎の回旋)ときは、筋肉の片側だけが収縮します。また、体を前に曲げる(腰椎の屈曲)ときは、左右の筋肉が同時に収縮します。
全身を使ってボールを投げたり、バットやラケットを振る動きなど、体を捻る動きでよく使われる筋肉です。スポーツの中での繰り返しが非常に多い動きなので、疲労がたまりやすい筋肉です。
腰痛予防のためにも、運動後などは、よくストレッチングをしましょう。
- 床に寝ておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
【注意】
(4)太もも前面(大腿四頭筋)
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とは?
太ももの前面にある大きく、強力な筋肉です。大腿直筋(だいたいちょっきん)、中間広筋(ちゅうかんこうきん)、内側広筋(ないそくこうきん)と外側広筋(がいそくこうきん)の筋群を総称して大腿四頭筋と呼びます。膝を伸ばす働き(膝関節の伸展)と、ももを上げる働き(股関節の屈曲)をします。
椅子や床から立ち上がる動き、ランニングやジャンプなど、多くの場面で使われます。
ケガ予防のためにも、よくストレッチングをしましょう。
- 床に寝ておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【つま先に手が届かない場合】
【注意】
(5)太ももの内側(内転筋)
内転筋(ないてんきん)とは?
太ももの内側にある筋肉です。短内転筋(たんないてんきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)や大内転筋(だいないてんきん)などがあり、主に脚を内側に振る働き(股関節の内転)をします。
バスケットボールやバレーボールのサイドステップなどの横移動、乗馬や平泳ぎなど、多くの場面で使われます。 運動後などは、よくストレッチングしましょう。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【注意】
(6)背中の横から脇(広背筋)
広背筋(こうはいきん)とは?
背中にある範囲の広い筋肉です。腕を後方に引く働き(肩関節伸展)や脇を締める働き(肩関節内転)などをします。
ボート漕ぎ、組み技系の格闘技、体操の懸垂や水泳のクロールなど多くの場面で使用されます。
運動後はもちろん、毎日のケアとしてもよくストレッチングしましょう。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【注意】
(7)背中の上部(広背筋Ⅱ)
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
- 立っておこなう場合
【注意】
(8)ふくらはぎ(ヒラメ筋)
ヒラメ筋(ひらめきん)とは?
ふくらはぎの深部にある筋肉です。つま先立ちをする際など足首を伸ばす働き(足関節底屈)をします。
足首を安定させる働きもあるため、多くのスポーツ場面で使用されます。ケガ予防のためにも、よくストレッチングをしましょう。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合
【注意】
(9)ふくらはぎⅡ(腓腹筋)
腓腹筋(ひふくきん)とは?
ふくらはぎの表層にある筋肉です。つま先立ちをする際など足首を伸ばす働き(足関節底屈)と、膝を曲げる働き(膝関節屈曲)をします。
- 床に座っておこなう場合
- 椅子に座っておこなう場合