ロコモ予防教室関連の測定データ紹介(片脚立ちバランス)
最近「ロコモ」を、テレビや雑誌で見ることや耳にすることも多くなりました。しかし、まだまだロコモを知らない人が多いことも現状だと思われます。
ロコモとは「Locomotive Syndrome(ロコモティブシンドローム)」運動器症候群」のことです。運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です(日本整形外科学会)。運動器が衰えると「立つ、歩くなどの動作=移動能力」に影響がでてしまい要介護の可能性が高くなります。その原因として日常の活動量の低下が挙げられます。加えて、年歳を重ねることによる運動器の衰えが挙げられます。
運動器が衰えるとどのような支障が出てくるのでしょうか?例えば、「何かにつかまらないと椅子から立ち上がれない」、「歩行中ふらつく」、「階段の昇り降りがつらい」、「つまづきやすい」、「歩行速度が遅くなった」などが挙げられます。
そこで、スポーツ医科学センターで実施されてきたロコモ予防教室関連の測定データの紹介をしていきます。実施している測定の詳細については「教室参加者の一例」※1に掲載しています。今回は片脚立ちバランスに注目して教室前と教室後の変化について紹介します。
1.片脚立ちバランス測定データの紹介
まず下記の図1は、横浜市スポーツ医科学センターで実施しているSPSデータから。片脚立ちバランス(右脚)の成功率を表しているグラフ(SPS測定解析シリーズ7「バランスについて」※2に掲載)です。
グラフからは、40歳代から20秒間片脚立ちを成功できなかった人が現れ始め、60歳代から顕著になっていることがわかります。バランス能力の低下は、歩行の不安定さや転倒(つまづき)などに影響します。
次に、ロコモ予防教室関連で教室前後に測定した片脚立ちバランスデータを紹介します。
人数 | 平均年齢 | |
---|---|---|
男性 | 11人 | 70歳 |
女性 | 41人 | 62歳 |
上の表1は、教室前後の測定データがある参加者の人数と平均年齢です。男性は54~88歳の11名、女性は41~78歳の40名、男女合計51名です。教室の参加者の平均年齢は男性70歳、女性62歳であり、20秒間片脚立ちの成功率が顕著に下がる年代となります。
下記の図2に示したのは、片脚立ちバランス(右脚)の教室前後の各評価人数です。評価は1~5で表され、評価値が高くなるほど優れていることになります。評価1~2は20秒間立てない、または揺れが大きい人になります。評価3は、図1で示したように成功率が顕著に下がる65歳平均値未満になります。つまり、65歳平均をクリアしていることになります。評価4以降は、より揺れ幅が小さくなることを表しています。
教室前の右脚で、評価1もしくは評価2の人数は26名でした。教室後には22名に減っていることがわかります。また評価4の人数が増え、更に評価5になった参加者もいました。左脚に関しても、同様な傾向が見られました。これは期間中の姿勢改善やバランストレーニングの効果が考えられます。
今回のデータは、片脚立ちバランス(20秒間)の評価を教室前後で比べた結果になります。片脚立ちバランス能力は、立位姿勢、股関節周りの柔軟性、脚や体幹の筋力など様々な働きによって発揮される能力です。
ロコモ予防に関しては、20秒間立てるだけでなく、片脚立ちの姿勢などにも着目し予防していくことが大切だと考えています。スポーツ医科学センターで実施しているロコモ予防教室関連は、姿勢などにも焦点をあて予防を促します。片脚立ちバランスができない人は、できるようになるために。20秒間できる人は、バランス時の姿勢を保つために、柔軟性向上や筋力強化を行っていきます。今後、バランス能力向上トレーニング方法についてもスポ医科コラム内で紹介していく予定です。
【参考資料】
※横浜市スポーツ医科学センター スポ医科コラム 健康・体力アップ情報 参照
※横浜市スポーツ医科学センター スポ医科コラム 「SPS測定シリーズ7 バランスについて」 参照