ロコモティブシンドロームの予防と改善
現在、テレビなどメディアで「健康」をテーマにした話題が多く取り上げられています。その代表的なものの一つが、「メタボリックシンドローム※1」(内臓脂肪症候群)です。「メタボ」と略され世間に広がり、認知度も高く、健康に気を遣う人も多く見られます。
ところで皆さんは、今もう一つ注目されている「ロコモ」を知っていますか?
1.ロコモを知っていますか・・・?
(1)ロコモとは・・・
ロコモは「Locomotive Syndrome(ロコモティブシンドローム)」運動器症候群」のことです。運動器とは身体活動に関わる骨・筋肉・関節・神経などの総称(日本整形外科学会HPより引用)です。運動器は年を重ねるごとに衰えていきます。運動器が衰えると「立つ、歩くなどの動作=移動能力」に影響がでてしまい、日常生活が1人では十分にできなくなってしまいます。そして、将来的に寝たきりなどになってしまうリスクが高くなることを意味します。
厚生労働省(介護保険事業状況報告)のデータによると、2000年の要支援・要介護認定者は256万人、2012年10月には548万人と2倍以上に増えています。このままでは近い将来、介護が必要な人であふれることになってしまいます。
横浜市スポーツ医科学センター(以下:スポ医科)のスポーツプログラムサービス(以下:SPS)の体力測定結果(スポ医科ホームページ:SPS測定解析シリーズ※2)によると、筋力は20代後半から低下傾向にあります。それは、生活環境が大きく影響します。「昔はよく運動していたけど最近はしていない」などの運動習慣の減少、「移動は車やエレベーター・エスカレーターなど乗物が多く、歩くことは少ない」など、歩行の減少が原因の一つと考えられます。今は「まだ大丈夫」と思っていても、ロコモ予備軍に足を踏み入れているかもしれません。そこで、早めに対処することが必要になります。日頃から運動習慣をつけることが、自立した生活を今後長く送ることができるポイントになるでしょう。
現在、日常生活の中で体力の衰えを感じたりはしていませんか?
(2)ロコチェックとロコモ度テスト
日本整形外科学会は、現段階でロコモ予備軍になっていないか、ロコモの危険性に気づく簡単なチェック項目として「ロコチェック」(2007年)を発表しました。そして、「運動器の健康」の向上を目指すためには、危険性を判定する指針の必要性も認識されていました。そこで、現在または将来のロコモ危険性を判定する方法として「ロコモ度テスト」(2013年)を策定しました。
一度チェックしてみてはいかがですか!?
■ロコチェック
7つのうちどれか一つでも当てはまればロコモの心配があります!
- 片脚立ちで靴下がはけない
- 家の中でつまずいたり滑ったりする
- 階段を上がるのに手すりが必要である
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 15分くらい続けて歩けない
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
(1リットルの牛乳パック2個程度) - 家のやや重い仕事が困難である
(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
■ロコモ度テスト
「立ち上がりテスト」「ツーステップテスト」「ロコモ25」のどれか一つでも年相応の平均に達していない場合は、そのままにしておくと将来ロコモになる可能性が高いと考えられます。
-
(1)下肢筋力判定方法「立ち上がりテスト」
【両脚の場合(下記の写真は40cmのイスを使用しています)】 【片脚の場合】
脚の筋力の判定をします。両脚または片脚で体重を支えられるかというテストです。
※膝・腰などに痛みのある方は無理にテストを行わないようにしましょう。10~40cmの台や椅子などを使って行うことができます。脚は肩幅ぐらいに広げ、腕を組んだ状態で腰かけ、反動をつけずに立ち上がり3秒間保持します。40cmの高さで両脚の立ち上がりができたら、40cm片脚で測定をします。片脚(左右)が成功後、10cmずつ台を下げて行い、成功した台の高さで評価します。例えば、働き盛りの40代なら男性で片脚40cm成功、女性で片脚40cm成功が年代別平均値になります。
【年齢別目安(立ち上がりテスト)】
男性 女性 20~29歳 片脚 20cm 片脚 30cm 30~39歳 片脚 30cm 片脚 40cm 40~49歳 片脚 片脚 50~59歳 片脚 40cm 片脚 40cm 60~69歳 片脚 40cm 片脚 40cm 70歳以上 両脚 10cm 両脚 10cm -
(2)歩幅判定方法「2ステップテスト」
歩行能力の判定をするテストです。
※膝・腰などに痛みのある方は無理にテストを行わないようにしましょう。上記のように、両足を合わせた状態から、できる限り大股で2歩進み両足を揃えます。歩行中にバランスを崩した場合は失敗となります。そして、進んだ距離を測ります。距離から2ステップ値を算出します。
【2ステップ値算出方法】
2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値
年齢別に評価指標があります。例えば、働き盛りの40代なら男性で1.54~1.62倍、女性で1.49~1.57倍の距離が年代別平均値になります。上記の写真(20~29歳、男性)の場合を算出してみると、
312cm ÷ 174cm = 1.79
になりました。年齢別目安の20~29歳、男性を見ると1.64~1.73になるので標準以上となります。
年齢別目安(2ステップテスト)
男性 女性 20~29歳 1.64~1.73 1.56~1.68 30~39歳 1.61~1.68 1.51~1.58 40~49歳 1.54~1.62 1.49~1.57 50~59歳 1.56~1.61 1.48~1.55 60~69歳 1.53~1.58 1.45~1.52 70歳以上 1.42~1.52 1.36~1.48 -
(3)身体状態・生活状況判定方法「ロコモ25」
日常生活について25項目に答え、答えを点数で示すテストです。年代相応の点数になるか確かめてみましょう。25項目の質問はロコモチャレンジ!日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト※3でお確かめください。※1・2 横浜市スポーツ医科学センター スポ医科コラム
・健康・体力アップ情報「知っておきたい肥満と減量の基礎知識 Ⅰ.理論編」
・SPS測定解析シリーズ※3「ロコチェック」「ロコモ度テスト」の方法・評価基準 ロコモチャレンジ!日本整形外科学会公認ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
2.ロコモ対策が必要なわけ・・・?
(1)ロコモ対策はなぜ必要か・・・(平均寿命と健康寿命)
「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」※1によれば、平均寿命(全国)は男性が79.55年、女性が86.30年(平成22年のデータ)となっています。
「健康寿命」という言葉をご存知ですか?これは世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した新しい指標で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。つまり、介護を必要とせず自立した生活を送れる期間ということです。平均寿命が長くても健康寿命が短ければ、寝たきりや認知症などにより介護を必要とする期間が長いことを意味します。
下図のように、健康寿命(全国)は男性が70.42年、女性が73.62年となっています。平均寿命から健康寿命を差し引いた年数は、男性で9.13年、女性で12.68年です。平均するとこれだけの期間、日常生活に制限がある状態で(介護等を受けて)過ごすことになります。
今後も平均寿命は延びることが予想されていますが、それに伴って健康寿命も延ばすことができなければ、個人の生活の質の面でも、社会全体の負担(医療費や介護給付費)の面でも今よりさらに厳しい問題となってきます。ロコモは「運動器の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性の高い状態」ですので、ロコモ対策は健康寿命を延ばすために非常に重要であると言えます。
(2)ロコモになる原因とは・・・
現代、世の中はとても便利になったように感じられます。買い物をするにもいたるところにコンビニがあり、またドラッグストアなどでも専門の商品でないものが色々と置いてあり、さらにネットで注文すればわざわざ買いに行かなくても家まで届けてもらえます。自動車や電動自転車を利用すればほとんど歩く必要もなく楽に移動ができ、また電車に乗るにも多くの駅ではエレベータやエスカレータが整備されていています。このような状況では、自分で意識的に動こうとしない限り、身体活動量は必然的に減少することになります。
ロコモになる要因として挙げられるのが、「筋力低下」「バランス能力低下」「骨や関節の病気」です。スポーツ医科学センターのSPS(スポーツ版人間ドック)ではこれらの要因をチェックすることができます。その結果(スポ医科ホームページ:SPS測定解析シリーズ※2)によると、筋力(脚筋力)は20代後半から低下傾向にあります。バランス能力(片脚立ち)に関しては40歳代あたりから不安定になってくる人が増加し、60歳代からは片脚立ちを20秒間維持できない人の割合が顕著に増加しています。筋力低下もバランス能力低下も生活習慣や環境が大きく影響します。運動習慣がない、歩く機会が少ない――といった身体活動量の少ない状態が長く続けば、誰もがロコモに近づいていくことになります。
骨や関節の病気については、ご存知の方や気にされている方も多いと思いますが、代表的なものに「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」があります。骨粗鬆症とは「骨の量が減り、質も劣化して骨の強度が低下し骨折を起こしやすくなった状態(日本整形外科学会引用※3)」です。骨量は20歳前後でピークに達し、その後加齢とともに徐々に減少していきます。特に女性では閉経後の骨量減少が顕著になります。骨粗鬆症になっても痛みはありませんが、ちょっとした転倒などで骨折しやすくなります。骨折が生じやすい部位は手首、大腿骨(太もも)のつけ根、背骨などです。骨量を維持するためには適切な食事で必要な栄養をきちんと摂り、適度な運動(ウォーキングなど)で足腰への刺激を与えることが必要です。
●加齢と身体活動量の低下による身体への影響
以上からおわかりのように、ロコモにならないためにはなるべく早い時期から適正な生活・運動習慣を身につけておくことが大切です。
【参考資料】
※1 厚生労働省 「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」
※2 横浜市スポーツ医科学センター スポ医科コラム SPS測定解析シリーズ
※3 日本整形外科学会 整形外科シリーズ「骨粗鬆症」
3.日ごろから心がけること
将来に渡り介助を必要とせず、いつまでも元気に生涯を過ごしていくことが誰もの理想になると思います。ところが、世の中は益々便利になり、身体を動かす機会が減少しているのが現実で、そうなるとからだの機能(運動器)はどんどん衰えていきます。そんな中、ロコモティブシンドロームを予防するために日ごろからどのようなことに気をつければよいのでしょうか?
(1)姿を見直してみる
姿勢が崩れると、それに関連する関節などの負担が大きくなり、痛みをひき起こす原因となる可能性があります。ここでは、立ち姿勢について説明します。
右画像の姿勢(1)~(3)までは同じ立ち姿勢ですがそれぞれ形が違いますね。
先ずは(1)の画像ですが、お腹が前に出て背骨や腰が反り、腰への負担が大きい姿勢になっています。
次に(2)の画像ですが顎(あご)が前に出て背中から腰が丸くなり、首や肩、腰に負担がかかりやすい姿勢になっています。
それでは(3)の画像はいかがでしょうか?
(1)や(2)と比較しても背筋がまっすぐ伸び、負担が分散され、安定した姿勢になっています。
さて、特定の部位に負担がかかりにくい姿勢とは一般的に右の人体図からもわかるように、横から見て『頭の頂点~耳~肩~太もも外側の膨らみ~膝のお皿の後ろ~外側くるぶしの前』を直線が通ります。
また、体の正面から見て、『肩の高さ、肘の高さ、骨盤の高さ、膝の高さ』が左右同じであるといわれています。
何気ない立ち姿勢ですが、皆さんもご自分の姿勢をチェックしてみてはいかがでしょうか?
4.姿勢の改善に役立つトレーニング
どうして、姿勢は崩れるのでしょうか?
姿勢が崩れる大きな原因として、日常の生活習慣の中で無意識に繰り返して行なっているクセの動作が影響していると考えられます。例えば、『荷物をもつ腕や肩はいつも同じ(写真1)』、『椅子に座って脚を組むとき、いつも同じ方向で組む(写真2)』、『テレビを見るときやパソコンで作業するときに頭が前に出る(写真3)』などです。 姿勢が崩れないように、日ごろから良い姿勢を意識することも大切ですが、今回は良い姿勢を作るのに役立つ運動を紹介します。
(1)動きが硬くなった腰や背中に効果が期待できる運動
左の画像のような背筋が伸びた良い姿勢を作ろうとしても、腰や背骨の周囲の筋肉や組織が硬くなり、動きが悪ければ、姿勢を崩す原因になります。姿勢の崩れは首や肩、腰への負担を大きくして、痛みにつながる場合があります。 このように硬くなった腰や背に効果が期待できる運動の一つとして、次の運動があります。
■ キャット&カール
(2)前に出た頭、丸くなった背中(猫背)に効果が期待できる運動
左の画像は、頭(あご)や肩が前に出て背中から腰が丸くなった(猫背)姿勢です。
このような姿勢の崩れは首や肩、腰への負担が大きくなります。
このような姿勢に効果が期待できる運動の一つとして、次の運動があります。
■ 肩甲骨セッティング(肘で床を押す)
(3)おなかが前にでる姿勢に効果が期待できる運動
左の画像は、お腹の力が抜けて腰が前に出てしまっている姿勢です。このような姿勢の崩れは腰が反り、腰への負担が大きくなります。
このような姿勢に効果が期待できる運動の一つとして、次の運動があります。
■ ドローイン(お腹へこまし)
なお、運動を実施するにあたり、首や肩、背中や腰に痛みがある場合は、予め整形外科を受診しましょう。
5.ロコモ予防のためのバランストレーニング
加齢に伴い、衰えやすい機能のひとつとしてバランス能力があげられます。
バランス能力とは、止まっている姿勢、または動いている姿勢を維持や安定させる能力のことをいいます。スポーツ選手は適切な姿勢を保つことが重要で、ボディーコントロールに優れていることが高いパフォーマンスにつながります。また、高齢者はバランス能力が低いと、ちょっとしたつまずきで姿勢を崩し、転倒につながってしまいます。
上の図は、当センターのスポーツプログラムサービス(SPS)の結果から、年齢別の左右の片脚立ちバランス能力の結果を表しています。左図が左脚、右図が右脚で横軸が年齢、縦軸が横方向の揺れの程度を表しています。縦軸の数字が大きいほど横方向への揺れが大きく、不安定な状態を表しています。この結果から、60歳を過ぎた頃から男女差にあまり関係なく数値が大きくなり、左右の脚で動揺が大きく、つまりバランスが悪くなっていることがわかります。
(1)『バランス』を保つのに必要な体の機能について
人がバランス能力を維持するためにどのような機能が大きく関与しているのでしょうか?
-
①感覚機能
バランスに重要な感覚機能には、目で見て自分の立ち位置や動きを認識する『視覚』、重力に対して体の位置や姿勢を制御する『前庭(平衡)感覚』、足の裏など皮膚からの刺激や関節の動きなどからの情報を感知する『体性感覚』があります。人は加齢により、視力の低下や視野の縮小、前庭感覚細胞や体性感覚細胞が減少することが分かっています。
-
②筋力と関節の動き(柔軟性)
体をしっかりと支えたり、崩れた体勢を立て直してバランスを保つためには、強い筋力が必要です。特に立位姿勢を維持するには、首や背中、お尻、脚などの筋力がポイントになります。また、関節の運動も重要です。体が前後左右に倒れそうになったとき、筋力と同時に体幹や股関節、膝、足首の前後左右の曲げ伸ばしを行い、崩れた姿勢を立て直します。加齢に伴い、筋力や柔軟性も低下することが分かっています。
(2)バランス能力の評価方法について
先ずは、バランス能力がどの程度あるのか、測定してみましょう。簡易的な測定評価方法として、文部科学省が実施している『新体力テスト』があります。新体力テストの高齢者対象(65~79歳)の項目の中にバランス能力を測定する『開眼片足立ち』があります。
●開眼片足立ち
- ①実施方法
・素足で両手を腰に当て、片足立ちの継続時間を計測します。
・片足でできるだけ長く立ち、最長120秒とします。
・測定終了の条件は、『挙げた脚が床や支持脚についたとき』、『支持脚の位置がずれたとき』、『手が腰から離れたとき』 - ②評価
(3)『バランスの改善』に効果が期待できる片足立ちのトレーニングについて
人は安定して立っているとき、体の中心にあたる重心(通常は骨盤内で仙骨のやや前)から床へ垂直に引いた線(重心線)が床と接している両足を囲んだ範囲(支持基底面)内にあります。(下記画像)
支持基底面から重心線が外れたときにバランスを崩したことになり、転倒につながります。しかし、筋力がある人は、多少バランスを崩しても、転倒しないで重心線を支持基底面内に戻すことができるのです。
①安定した床面での片足立ちトレーニング
片足立ちトレーニングは毎日、左右1分ずつを3回実施しましょう。実施については下図のとおり、姿勢に注意しましょう
②片足立ちトレーニング(レベルアップ)
①が安定して実施できるようになりましたら、感覚機能を混乱させて、難易度をアップしましょう。
- ■ ア) バランスディスクや柔らかいクッションの上で片足立ち
足の下にバランスディスクやクッションを挟むことで、体性感覚を混乱させて、
不安定な状態の中、トレーニングします。 - ■ イ) 両目を閉じて片足立ち
目を閉じることで視覚からの情報を遮断し、不安定な状態の中、トレーニングします。
〈注意〉ア・イともに、バランスが崩れたら転倒の危険が大きくなります。
初めは壁や手すりを持って実施しましょう。
今回は、バランスの感覚を意識したトレーニングを紹介しました。
筋力トレーニングにつきましては、次回の『ロコモ予防のための筋力トレーニング』で紹介いたします。
6.歩行能力を高めるための筋力トレーニング
脚筋力の低下はロコモになる最も大きな原因とされています。
筋力とは、筋肉が発揮する力のことで、重いものを持ち上げたり引っ張ったりする際に必要な力のことです。また、筋肉は身体を動かすだけではなく、支えたり外部の衝撃から身体を守る役割もあります。
特に股関節や膝関節周辺の筋力低下は、歩行速度や歩行動作の安定性を低下させる原因になります。不安定な歩行は膝や腰などの関節に負担をかけて、機能障害を引き起こす原因にもなります。
今回は『歩行』に大きく影響を与える脚の筋力トレーニングを紹介します。
(1)『歩行動作』で使う筋肉
歩行は全身運動ですが股関節・膝関節・足関節の周りの筋肉が使われ、姿勢を保ち体重を支えながら力を発揮しています。
①股関節前面の筋肉(腸腰筋:ちょうようきん)
主に太ももを持ち上げるときに使う筋肉です。歩行では太ももを持ち上げる、また着地した脚の股関節を安定させる役割があります(下写真の紫色部分)。
②股関節後部の筋肉(大臀筋:だいでんきん)
主に太ももを後ろに引くときに使う筋肉です。歩行では着地した脚を後ろに引く、また前へ振り出した脚のスピードを減速して着地の衝撃を和らげる役割があります。さらに着地した脚の股関節を安定させる役割もあります(下写真の黄色部分)。
③股関節外側の筋肉(中臀筋:ちゅうでんきん)
主に太ももを外側に引き上げるときに使う筋肉です。歩行では脚が床についている間、骨盤を安定させる役割があります(下写真の赤色部分)。
④股関節内側の筋肉(大腿内転筋:だいたいないてんきん)
主に太ももを内側に閉じるときに使う筋肉です。歩行では、脚が床についている間③の外転筋と共働し骨盤を安定させる役割があります(下写真の緑色部分)。
⑤太もも前面の筋肉(大腿四頭筋:だいたいしとうきん)
主に膝を伸ばすときに使う筋肉です。歩行では、床に着地したとき、荷重で膝が曲がらない(膝折れしない)ようにする役割があります。膝関節を支える重要な筋肉です(下写真の白色部分)。
⑥太もも後面の筋肉(ハムストリング)
主に膝を曲げるときに使う筋肉です。歩行では、②の股関節伸展筋と共働して床を後方に蹴り(かく)、また⑤の大腿四頭筋と同時収縮して膝関節を安定させる役割があります(下写真の青色部分)。
⑦ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋:かたいさんとうきん)
主につま先を下に伸ばすときに使う筋肉です。歩行では前進のとき、つま先で床を強く蹴りだす役割があります(下写真の橙色部分)。
⑧すねの筋肉(前頸骨筋:ぜんけいこつきん)
主に足首を曲げてつま先を上にあげるときに使う筋肉です。歩行では着地のとき、つま先を上げ足首を固定し安定させる、また脚を前に運ぶときもつま先を上げてつまずきを防ぐ役割があります(下写真の緑色部分)。
(2)筋力の評価方法(ロコモ度テスト)
日本整形外科学会では、将来「ロコモ」になるリスクを知るためのテスト(ロコモ度テスト)の一つとして、脚力を測る『立ち上がりテスト』を推奨しています。このテストは年齢に応じて高さ10~40cmの台に座り、片足や両脚で立ち上がれるかを評価します。
※実施方法や評価については『1.ロコモを知っていますか・・・?』の項目に掲載
(3)歩行能力の向上に役立つ脚の筋力トレーニング
それでは、歩行能力を高めるために有効な股関節周辺・膝関節周辺・足関節周辺の筋力トレーニングについて紹介します。自宅でできる種目ですので、ぜひ実施してください。