肥満と減量(実践編)
【減量を成功させるために】
健康科学課 畑田 康(運動指導員)
1.自分の身体を知ろう
テレビ、新聞、雑誌などでは、「ダイエット」、「痩せる」、「減量」などの言葉が毎日のように取り上げられています。
現代人の多くが、自分の体重に関心をもち、その大多数の人が体重を現状より減らしたいと思っているからです。減量をするにあたって大切なことは、まず自分の身体の状態を知ることです。
そして本当に減量が必要な場合は、ライフスタイルを見直すことが大切です。
2.減量を行なう前に知っておくべきこと5か条
(1)現在の身長、体重、体脂肪率はどれくらい?
「太ってみえる」「このごろ身体が重い」など見た目や感覚だけでなく、数字でも自分の身体を把握してください。
- 自分の身長を測ってみましょう
- 体重と体脂肪率を測ってみましょう
現在は多くの体重計に体脂肪測定の機能がついているものも多く、家庭でも簡単に図れるようになりました。
適正な体脂肪率は、男性では 15 - 19 % 、女性では 20 - 25 % です。これを下回ると低脂肪で、これを上回ると肥満と判定されます。
(2)自分の適性な体重は、何kg?
BMIの計算をしてみましょう。
※BMIとは、Body Mass Indexの略で、体格を評価する指標のひとつです。
BMIによる肥満の判定基準は国によりことなり、わが国では日本肥満学会がBMI=22の場合を標準体重としており、25以上の場合を肥満、18.5未満である場合を低体重としています。
BMI=(体重kg)÷(身長m)2
BMIの計算式を応用して、適正な体重を計算してみましょう。
適正体重=(身長m)2×22
(3)本当に肥満なの?
(1)・(2)から算出した数字などから、減量が必要であるかを考えてください。
- BMIが25以上であるが、体脂肪率は正常値であった場合
身体が筋肉質であるために肥満でない可能性があります。
- BMIは正常値であったが、体脂肪率が適正値を超えている場合
体重が軽くても体脂肪の量が多く、肥満の可能性はあります。(隠れ肥満)
- BMIが25以上で、体脂肪率が適正値を超えている場合
肥満の可能性が高いです。
(4)体重が増えてしまった原因?
どのようなことが原因で肥満になったのかを分析することが重要です。
※肥満になる主な原因
ア 食事
(ア) 過食
一日に必要なカロリー以上に栄養を取ってしまうと、使われない余剰カロリーが身体に蓄積され、肥満になって
しまいます。
※推定エネルギー必要量(
kcal/日) 厚生労働省
|
男性 |
女性 |
身体活動レベル |
低い |
普通 |
高い |
低い |
普通 |
高い |
15〜17歳 |
2,350 |
2,750 |
3,150 |
1,900 |
2,200 |
2,550 |
18〜29歳 |
2,300 |
2,650 |
3,050 |
1,750 |
2,050 |
2,350 |
30〜49歳 |
2,250 |
2,650 |
3,050 |
1,700 |
2,000 |
2,300 |
50〜69歳 |
2,050 |
2,400 |
2,750 |
1,650 |
1,950 |
2,200 |
70歳以上 |
1,600 |
1,850 |
1,850 |
1,350 |
1,550 |
1,750 |
レベルT (低い): 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
レベルU (普通): 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤
・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
レベルU (高い):移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な
運動習慣をもっている場合
(イ)栄養過多
甘いものばかり食べている、毎食揚げ物を食べるなど栄養が偏ってしまうのは、肥満の原因となります。
(ウ) ミネラル・ビタミン不足
ミネラルやビタミンが不足すると、新陳代謝が落ち、結果的に肥満の原因となります。
イ 運動不足
スポーツをする習慣がなくても、日常生活で身体を動かすことでエネルギーを無理なく消費することができます。
普通の歩行(時速 約3km)では、30歩で1kcal を消費します。スポーツで身体を動かすことが少ない人は、
歩数計で一日の歩数を計ってみましょう。
(5) 現在の健康状態はどうか?
特に病気にかかっていなくても、平常時の血圧などが正常値であるかなどを確認する必要があります。また、動機や息切れ、疲れやすいなどの自覚症状があれば、減量を行うときに注意が必要です。
※血圧の基準(
WHO,
1978)
高血圧 |
最高血圧160mmHg 以上、最低血圧95mmHg以上のどちらか、または両方に該当する場合 |
境界高血圧 |
最高血圧141〜159mmHg、最低血圧91〜94mmHg のどちらか1つに当たり、他の1つが正常血圧の場合、または両方に該当する場合 |
正常血圧 |
最高血圧140mmHg以下、最低血圧90mmHg以下の場合 |
※参考文献
健康運動指導士 養成講習会テキスト T(公財)健康体力づくり事業財団
3.減量を成功させるためのコツ
いざ減量を始めようとすると、必要以上に気合が入ってしまう人も少なくありません。
減量を成功させるための重要な要素は、言うまでもなく食事と運動です。減量を始めると必要以上に食事を我慢したり、身体が動かなくなるまで運動したりして、結局減量が長く続かない人が多いようです。減量の効果があらわれる時間は、その人によって違いますが短い期間では十分な効果は得られません。
減量の成功のためには、食事の制限や運動習慣を長く継続できる工夫をすることが大切になります。
4.減量の継続(成功)は、毎日の記録から
減量のために、苦しいと感じられる食事制限や運動習慣を長期間継続するためには、毎日の記録をつけていくことがとても有効です。
(1)減量を記録するメリット
- 減量の進み具合や自分の状況を客観的に把握し、自分に必要なものが理解できる。
- 減量について専門家(栄養士、運動指導員等)からアドバイスを受けるときに非常に参考になる。
- 減量が成功した後も、リバウンドしないための参考書になる。
- 文章を書くことで、減量のストレスが解消される。
(2)記録する内容
- 体重・体脂肪率
体重・体脂肪の計測は朝食前が理想的です。測定の際は、決まった時間・条件下(服装や体重計等)で測定してください。測定した体重をグラフにすると毎日の体重変化がよくわかります。
【体重記録グラフの例】
上のグラフは、当センター減量教室参加者が教室期間中に記録した体重をグラフにしたものです。
この方の場合、減量を開始しても体重は毎日小刻みに上下しながら、減少していっています。
- 食事内容
・朝食、昼食、夕食そして間食と、食事やおやつを食べたごとに記録しましょう。
・アルコールやジュースも飲んだ量を記録するようにしましょう。
・食べた物のカロリーは、包装紙にある表示を確認したり、携帯電話のアプリなどで調べたりして記録するようにしてください。
- 一日の歩数
歩数計(万歩計)や携帯電話のアプリなどをつかって、朝起きてから夜寝るまでの一日の歩数を記入してみましょう。30歩で1カロリーを消費すると言われているので、1日1万歩以上歩くと、約300kcalを消費することになります。
できるだけ正確に一日の歩数を測るために起きた直後に歩数計などを身につけるようにしましょう。
- 運動(身体活動)
スポーツを行なった場合、種目や時間を記録してみましょう。スポーツだけではなく、犬の散歩や家庭菜園の世話などもスポーツと同様に活動的な身体活動なので、行った時間を記録してください。
- 減量の感想など
うまく減量が進んだときの喜びや達成感、または減量を続けていく上での悩みや不安など感じたことを何でも書いてみましょう。書くことでさらに減量の効果を実感することができ、また不安や悩みを解消する方法を見つける手助けになります。
(3)記録の方法
記録用のノート、いつも使っている手帳など、常に同じものに記録していきましょう。携帯電話のカメラで食事の写真をとって、そのほかの情報と一緒に記録していくのも良い方法です。
自分が記録しやすい方法で、いつでもその記録を見られるものが良いでしょう。