スポ医科コラム
第27回 港北駅伝大会活動報告
横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 藤田 真希子(理学療法士)
駅伝スタート直後の選手たち
2012年1月8日、日産フィールド小机にて港北区駅伝大会が開催されました。港北駅伝大会は昭和61年から開催され、区民の皆様に親しまれている大会です。新横浜公園周回コースを駆け抜け、一般、もしくは中学・高校の部では6名1チーム、連合町内会の部では9名1チームで合計約20qを争います。当日は風があり寒いものの、青空の下でのレースとなりました。駅伝というと陸上選手が多いものと思っていましたが、野球やサッカーなどのユニフォームを着た選手も多く参加していたのが印象的でした。また中学・高校・一般の部に分かれてのレースだったため親子で参加した方も見られました。
横浜市スポーツ医科学センターからは、12月の横浜マラソン大会で実施した企画から引き続き、パネル展示・チラシ配布・出張クリニック・アンケートを実施しました。出張クリニックでは2名の理学療法士が、ランニング障害や体の悩みを抱える方々の個別相談を行いました。問診や評価により専門的な立場から個々の問題点を抽出し、個々の状況に応じて、走る量を変えずに自分でできる手軽な運動の紹介、走る量や環境のコントロール、医療機関を受診の推奨などを提案しました。今回も医師が不在であったため診断・治療は行えませんでしたが、限られた環境と情報の中での相談でも「自分の体のことが良く分かった」、「どうしていけばいいのかが分かった」などの言葉を頂きました。
パネル展示
出張クリニックのテント
出張クリニックの様子
今回の出張クリニックでは痛みはあるが走れている、という方が多く参加されていました。医療機関を受診しないのには様々な理由があります。「受診するほどは痛くない」「まだ動けているので大丈夫」「そのうち治るだろう」・・・自分の身体の声に耳を傾け、ケアしていくことは大切なことだと思います。しかし、日ごろの診療の中で「医者にかかると休めと言われるから受診しなかった」「休めと言われるから監督に受診するなと言われた」などという話も聞くことがあります。病院で治療に当たる患者さんの中には、痛みが我慢できる限界まで練習をし、痛みのために競技を継続することができなくなってしまった状態の方もいます。無理をして練習を続け、痛みのため練習の継続が困難という状態になる頃には、組織へのダメージは蓄積し、長期間練習を休まなければならない状態になっていることもあります。早期に発見し治療を開始していれば、少し休むだけで、または全く休まずに競技復帰も可能であったと考えられるケースも少なくありません。
痛みがあるけれどもこのまま動き続けても大丈夫なのか疑問に思っている方や、休むよう指示されるからと受診をためらっている方は一度当センターを受診することをお勧めします。当センターはスポーツ医療の専門機関であり、患部や身体の状態を検査・評価した上で、運動によってかかる負荷、大切な試合までのスケジュール、本人の希望などを踏まえて方針を提案し、治療を行っています。日ごろの診療の中では本人の希望に沿えず休むことが必要な場合もありますが、当センターで「運動の休止」を提案するのは、後遺症や回復が長引くことで練習や試合に参加できなくなるリスクを考慮してのことです。選手の理解が得られないまま運動休止を強制することはせずに、休止の必要性を選手に説明したうえで、最適な復帰に必要な場合に運動休止を提案しています。
今回対応した方の中にも医療機関などでの個別の対処が望ましいと考えられる方々がいらっしゃいました。中には、もともと医療機関を受診することや休むことに否定的でないにも
かかわらず、訪れて何をするのか、どういったことを提供してもらえるかが分からないために、足が向かないという方もいました。受診という選択肢を提案する理由とともに、当センターに来院することで提供できることを説明させていただくと興味を持って頂けたようでした。今回、スポーツ現場で運動を行う市民の方に直に接することで、受診の理由や提供できる内容を示すことがいかに大切であるかということを改めて感じることができました。今後もより良い治療を提案するとともに、運動をする方々が安心して受診を選択できるように我々が行っている医療の情報を公開していきたいと思います。