本文へスキップ

電話でのご予約・お問い合わせはTEL.045-477-5050

〒222-0036 神奈川県横浜市港北区小机町3302-5(日産スタジアム内)

スポ医科コラム

 第37回 日本整形外科スポーツ医学会学術集会参加記

                        横浜市スポーツ医科学センター リハビリテーション科 中村 絵美(理学療法士)

 『第37回日本整形外科スポーツ医学会学術集会』が9月23-24日の2日間、福岡国際会議場にて開催されました。今回の学会は「スポーツ復帰に向けたトータル・ケア」というテーマを主体に診断から手術的治療、リハビリテーションまでを含んだ包括的な診療とケアの重要性を知る事ができる内容が多く議論されていました。また、2日目の最後をしめくくるセミナーでは元プロ野球選手の桑田真澄氏の講演があり、多くの参加者がトップアスリートならではの話に耳を傾けていました。


 今回の学会では、「スポーツ復帰」というメインテーマが掲げられていたことから、病院や施設内での診断や治療にとどまらず、競技復帰(現場レベル)までの経時的な流れに沿った内容の講演や発表が多岐にわたって行われていました。 現場でのメディカルチェックに始まり、その後の病院やクリニックなどの施設における検診、そして競技復帰までのフォローアップに至るまで、整形外科医師だけでなく、理学療法士やトレーナーの視点からの議論が多くみられました。その中でも、スポーツ復帰基準や時期に関しては未だ十分な共通理解や体系化が確立されていないことが課題とされ、今後も幅広い視点からの検討が必要であることが示されました。




 今回、当センターからは「ジュニアテニスプレーヤーにおける傷害の性差および年代差について」という内容で整形診療科の赤池敦(整形外科医師)が口述発表を行いました。近年、競技スポーツ開始年齢の早期化によりジュニア選手のスポーツ障害が軽視できないものとなってきています。この研究では、1998年から2010年の間に当センターを受診したジュニアテニス選手の疾患の特徴を検討し、予防やその啓発活動の資料とすることが目的とされ、安易に成長痛として捉えず、オーバーユース障害として全身のコンディショニングにも注意を払う必要があることを報告しました。
 
  スポーツ医学においては機能・構造的な破綻からくる疼痛だけではなく、そのスポーツに特有な動作や個人のクセといったものが外傷・障害の発生に大きく関与しています。
 本学会でリハビリテーション科から、小林匠(理学療法士)が「シンスプリント症例の荷重位X線足部内側アーチ高からみる発症メカニズムの推測」という内容で、初診時のX線画像からシンスプリント症例の足部アーチ構造の特徴を検討し、従来報告されている足部内側アーチの低下が、必ずしも全例に認められないこと、認める場合でも中足部でのアーチ低下が原因となり、荷重時の中足部の機能が重要と考えられることを報告しました。
 
  また、坂田淳(理学療法士)が「内側型野球肘患者の疼痛出現相による投球フォームの違いと理学所見について」という演題で発表し、投球時に疼痛が出現する相の違いによって、特徴的な投球フォームが存在することを報告しました。肘関節の機能・構造的な破綻の改善だけでなく、投球動作というスポーツ活動特有な動きとの関連を検討することで早期の競技復帰、また再発予防につなげていくことが必要であることを示しました。
 
 
 



  今回、学会に参加したことで、「スポーツ復帰」という最終目標に向けて、選手に関わる全てのスタッフが共通理解の元で働きかけを行う必要があることを改めて痛感しました。競技復帰に向けて、当センターでも日々研鑽し、可能な限り最短・最善の治療を行なっていきたいと思います。また、障害・再発予防につながる研究にも積極的に取り組み、市民の皆様に還元していきたいと思います。