横浜市スポーツ医科学センター 健康科学課 持田 尚(スポーツ科学員)
@国立オリンピック記念青少年総合センター平成23年1月12日(水)
本会議は、生涯スポーツ社会の実現に向け創設された総合型地域スポーツクラブの育成及び地域のスポーツ活動全般に対する行政支援の在り方について、都道府県と市町村の立場から考えることを趣旨として、文部科学省主催で開催されたものです。
全体として「地域資源を有効に活用するために」をメインテーマにパネルディスカッションがも催され、「人材の活用」、「情報の活用」、「地域の特徴を活かしたスポーツ支援」といった内容をサブテーマにした分科会がそれに続いて実施されました。
今回は、文部科学省より、教育委員会、市民活力推進局、健康福祉局などスポーツや健康に携わる部局と連携したスポーツ医科学の普及活動について発表してほしいとの依頼があり、代表発表者として命ぜられましたので、「情報の活用」分科会にて、横浜市スポーツ医科学センターの事業紹介を行ってきました。
1.総合型地域スポーツクラブ文部科学省(以下、文科省と略す)は、「スポーツ振興基本計画」(平成12年9月(平成18年9月改定)文科省告示)において、生涯スポーツ社会の実現に向けた目標の一つに、平成22年までに全国の各市区町村に少なくとも1つの総合型地域スポーツクラブを育成していくことを掲げました。平成21年7月現在では、全国1798市区町村あるうち、1167市区町村に約2900のクラブが育成され、国民の誰もが身近にスポーツを親しむことのできる場が増えつつあります。
横浜市でも各区1つ以上のクラブを創設することを目標に取組み、現在準備団体も含めると18区のうち13区に19のクラブが育成されました。
2.広域スポーツセンター機能強化事業
生涯スポーツ社会の実現政策の具体的な事業の一つに、広域スポーツセンター機能強化があります。
「地域のスポーツ活動全般及び総合型地域スポーツクラブの創設や運営、活動を効率的に支援するために必要な広域スポーツセンターに対して、その持つべき機能を強化する取組みを推進するというものです。持つべき機能とは、(1)トップレベル競技者の育成、(2)スポーツ科学・医学・情報に関する支援、(3)スポーツ指導者情報の提供です。横浜市の場合は、広域スポーツセンター機能は財団法人横浜市体育協会(以下、横浜体協と略す)が有しています。横浜体協には、上記の機能を果たす能力は持ち備えています。しかしながら、保有する各スポーツクラブへの浸透といったところでは、まだ十分に機能していないところもありますので今後さらなる積極的な取組みが求められています。
3.スポーツ医科学センター事業
我々は、ジュニア、スポーツ選手・スポーツ愛好家、高齢者といった各世代を対象にスポーツとの関わりの中で、それぞれの目的に応じた体力づくりや動き作り、そして健康づくりを医科学的に支援しています。
中高齢者では介護予防としてスポーツプログラムサービス(以下、SPSと略す)、医学的運動療法(以下、MECと略す)、減量教室、ロコモティブ症候群予防教室(以下、ロコモ教室と略す)やウエルラウンド教室などを展開しています。SPSでは医学的検査と体力測定を実施し、個々の健康状態、体力レベルに見合った運動プログラムをアドバイスする1Dayパッケージのサービスとなっています。検査と測定を受けたその日のうちに結果を受け取りアドバイスがもらえる特徴ある事業です。これは、各健康づくり教室の効果測定としても活用されています。
青年期のアスリートや壮年・中年期のスポーツ愛好家には、医学面とスポーツ科学の面からトレーニング支援を行っています。プロスポーツ選手から、実業団、市民ランナーと幅広く利用してもらっています。
ジュニア期では、スポーツ外傷予防と競技力向上をテーマに、学校部活動やクラブスポーツにおける子供のスポーツ活動を支援しています。現在は、サッカーのオスグッド病予防、女子バスケットボール膝傷害予防、陸上競技シンスプリント発症予防について研究を進めています。また、理論と実践のセミナーを実施し、ジュニアスポーツ指導者育成の支援も行っています。
言わば、ジュニアのスポーツ活動は文科省管轄、介護予防につながる高齢者の健康づくりは厚生労働省管轄といったように、国民の健康づくりは年代を通じてみると省庁の枠を超えた取組みとなります。ジュニア期のスポーツ活動は老後を見据えての筋萎縮予防、骨萎縮予防、さらには転倒予防につながります。つまり、我々が行っている、ジュニア、スポーツ選手・スポーツ愛好家、高齢者といった各世代を対象にした事業は、鳥瞰的視野に立てば、年代を通じた国民の健康づくりを行っていることとなります。
今後は、各年代を対象とした事業から創出した知見を各区にある総合型地域スポーツクラブや各区スポーツセンターへ普及・啓蒙し、また指導現場からの課題を受けて、それを解決していく取組みや研究を行うといった、医科学情報のシャトルシステムを、横浜市体育協会とスポーツ医科学センターが確立していくことが望まれるでしょう。