第13回
腰痛・
膝痛のメカニズムと運動療法
スポーツ医科学センター 整形診療科 小林 匠(理学療法士)
【1】 腰痛の発症メカニズム
腰痛が発症する原因にはさまざまなものがありますが、レントゲンやMRI検査を行っても異常が見当たらない慢性腰痛(筋・筋膜性腰痛)は、姿勢の崩れや柔軟性の低下、筋力不足などが原因となっていることが多いです。
このような慢性腰痛は、痛みの出る場面からいくつかの種類に分類されます。まず、長時間立っていたり座っていたりすると痛みが出るような安静タイプと、からだを曲げたり伸ばしたりしたときに痛みが出るような運動タイプです。
安静タイプの腰痛は、上方から見て肩と骨盤のラインが前後にずれている、後ろから見て背骨が左右対称になっていない、等の不良な姿勢が原因となり、腰部への負担が増して痛みが発生することが多いです。
運動タイプの腰痛は、腰部の股関節や胸椎、肋骨などの動きが悪くなったり、腹筋や殿筋、上部の背筋の筋力低下が原因となり、腰部への負担を増やして痛みが発生することが多いです。
【2】 腰痛の運動療法
では、腰部への負担を減らすためには、どのような運動が必要となるのでしょうか。原因によって必要な運動は異なりますが、股関節や胸椎・肋骨の動きを広げたり、腹筋や殿筋を鍛えたりすることで、腰部への負担を減らすことが可能です。
このような運動を習慣づけることが、腰痛の治療や予防につながります。
【3】 膝痛の発症メカニズム
中高年者の膝の痛みは変形性膝関節症から生じることが多いです。変形性膝関節症は加齢を基盤として、肥満や重労働、下肢のアライメント(骨の配列)異常などの要因が複雑に絡み合って起こる疾患で、O脚(内反)変形がみられることが多いです。
変形が徐々に進行すると、何らかのきっかけで痛みが出現し、腫れ、膝の動きの制限、筋力低下の悪循環が始まります。この悪循環から抜け出すためには、変形の進行を少しでも遅らせるような治療が必要となります。
このO脚変形が進行する直接的な原因は、学問的に明らかではありませんが、O脚の人では大腿に対して下腿が外旋(外にねじれた状態)である例が多く見られます。これは、変形がない若年者の膝でも見られることが多いです。また、そのねじれに伴って膝の曲げ伸ばしが悪くなっている場合が多く、膝の曲げ伸ばしが悪いと膝周囲の筋力も低下してしまいます。
【4】 膝痛の運動療法
このように悪化した膝の状態を改善させるためには、どのような運動が必要となるのでしょうか。まず、膝のねじれを戻すストレッチを行って、膝の曲げ伸ばしを改善させ、自分の力でつま先と膝が同じ方向を向いたまま膝を伸ばし、大腿前面の筋肉(大腿四頭筋)を固めるようにすることが必要です。
このような運動を行い、膝の状態を改善(痛みなく曲げ伸ばしができる状態)させてから、スクワットトレーニングや有酸素運動を行うことが望ましいです。
【5】 おわりに
今回は腰痛・膝痛のメカニズムと運動療法を簡単に紹介しました。痛みが強くて運動が行えない場合は自己判断せず、当センターのクリニック(整形外科)、または専門医のいる医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。
参考文献 |
(1)専門医が治す!腰痛 三木英之・蒲田和芳著 高橋書店
(2)手軽な運動で腰・ひざ・肩の痛みをとる 黒田善雄監修 講談社 |