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第7回

 スポーツトレーニングの基礎理論(2)
 「エクササイズ」

                            スポーツ医科学センター  事業連携担当部長 藤牧利昭(医学博士)

 厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」では、健康づくりに必要な運動量を示しています。身体活動を量的に評価する場合、運動強度と時間が問題となりますが、運動強度の指標は、前回説明した「メッツ」です。そのメッツに時間を掛けた値が運動量になり、厚生労働省では、1メッツの活動を1時間行った場合を「1エクササイズ」と定義しています。「1エクササイズ」になる例を図に示しました。それぞれ長い時間行えば2エクササイズ、3エクササイズとなっていきます。「速歩き」を30分行えば2エクササイズになり、「ゆっくり泳ぐ」を50分行えば5エクササイズということになります。

 さて、実際に健康づくりを行うには、「週
3回ジョギングを行う」というように「健康づくりのためにまとまった運動をする」ことと「通勤では車を使わず駅まで歩く」とか「エスカレーターを使わずに階段を昇る」というように「日常生活を活動的にすること」を組み合わせることが有効です。厚生労働省では、両方を合わせて1週間に23エクササイズ以上を行い、そのうち4エクササイズはジョギング、水泳、速歩きなどまとまった運動を行うことが望ましいとしています。

 例えば、毎日が活動的な人では、週
5日ウォーキング(=3メッツ。20分で1エクササイズ)を60分行うと13エクササイズなので、週5日で15エクササイズ、週末にジョギング(=6メッツ。10分で1エクササイズ)40分を2回行えば、8エクササイズで合計23エクササイズになります。一方、ウィークデイに運動時間が取れない人では、週5日速歩き(=4メッツ。15分で1エクササイズ)を15分行うと11エクササイズなので、週5日で5エクササイズ、週末に、ジョギングを90分ずつ2日行なうと各9エクササイズで合計23エクササイズになります。

 このように、運動強度と時間から、運動ごとに点数をつける方式は
1960年代の“エアロビクス運動”が最初で、1週間に何点獲得し、12週間で週ごとの点数を増やしていくと効果的に体力が高まるというのが、“エアロビクス運動”でした。“エアロビクス運動”で取り上げられた有酸素運動には、ジョギング、サイクリング、水泳の他に、音楽に合わせて行うエアロビック・ダンスがあります。このエアロビック・ダンスが、「エアロビクス」として現在も広く行われているのに比べ、“エアロビクス運動”の中核である点数システムは、わが国には、ほとんど普及しませんでした。この「エクササイズ」も公表されて2年経つものの代表的なインターネット検索サイト2社で「エクササイズ」を検索しても、上位100件中に、厚労省の「エクササイズ」に該当するものは、それぞれ1件ずつしかありません。

 ところで
1メッツというのは安静状態のことですから、何もせずに12時間過ごすと12エクササイズとなってしまい、ジョギング(6メッツ)2時間と同じ運動量になってしまい不合理です。そこで、3メッツに満たない運動や活動は、エクササイズとして計算しないことになっています。

 ダイエットでの食事制限と運動の関係で類似の話があります。ダイエットでは、食事を
200カロリー減らしても運動で200カロリー消費しても減量効果は同じはずですが、実際には、食事制限だけだと、→不活発→カロリー消費量の低下とつなが ってあまり効果がなく一方、運動では、→活発化→カロリー消費量の増大とつながり、効果があります。これについてはいずれ解説します。

■エクササイズの例
 強度の高い運動では、短い時間で
1エクササイズになります。
 2倍の時間行えば、2エクササイズ、3倍の時間行えば3エクササイズです。

 エクササイズ
 

このコラムは「図解スポーツトレーニングの基礎理論」(横浜市スポーツ医科学センター編、西東社 2007年)を参考に 執筆しています。

 

 
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