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健康・体力アップ情報health & fitness Information

ウォーキングの科学

速く歩く!

                                  健康科学課  小野 宣喜(スポーツ科学員)

 

これまで、ウォーキングをする時の姿勢や通常歩行速度について記述してきました。今回は、速く歩くことに着目してみましょう。


1.速く歩くこと

 2015年7月より横浜市スポーツ医科学センターでは、スポーツ版人間ドック(SPS)に「最大歩行速度(図1)」という新しい測定を追加しました。歩行速度は、筋力、全身持久力、平衡性、日常生活動作、など多数の健康関連指標との間で相関が高いことが報告されています。また「速く歩ける人ほど健康状態が良い」、「速く歩ける人ほど転倒リスクが低い」ことが先行研究によって明らかにされています。そこで当センターではロコモの評価指標の一つとして、新たに種目を追加しました。

 図1.最大歩行速度測定
    11mの歩行路をなるべく速く歩き、歩行路中間の平均速度を測定しています。

 スポーツ版人間ドック(SPS)には、比較的運動を習慣的に行っている、または過去に行っていた方が多く受診されます。実際に、最大歩行速度を測ると歩行の速度を速くする事に戸惑いを感じる人が多いようです。受診者からは、「速く歩くって難しい」、「日頃、速く歩かないからなぁ」などの感想を耳にします。また、「速く歩くってどうやるの?」などの質問もあります。歩行習慣がある人でも、ウォーキングの速度には気を配っていない人が多いように感じます。
 「歩く=ウォーキング」と「走る=ランニング」との大きく違う点は両足が同時に地面から離れる場面があるかどうかです(当センターホームページ 「健康・体力アップ情報(ランニングの基礎知識 1.ランニングとウォーキングの違い (1)動きの違い)」参照)。ウォーキングには両足が同時に地面から離れる場面がありません。受診者の感想を聞くと、両足が同時に地面から離れる場面がないことで、速く進むことが難しく感じるようです。
 ある文献によると、ショッピング地区、居住地区、ビジネス地区では歩行速度が違うと報告されています。ビジネス地区では、他地区より歩行速度が速いことを報告しています。地区の環境などによってウォーキングの速度が影響していることも考えられます。
 ウォーキングの習慣はとても良いことです。少し変化(目的)をつけてウォーキングをしてみてはいかがでしょうか。いつものウォーキングコースで、少しペースをあげてウォーキングをする区間を作ることをお勧めします。例えば、景色や花や木をゆっくり見たい場所では散歩ペースでウォーキングします。次の場所に移動するときは、少し速くウォーキングをします。この時、いつもの歩幅より急激に広げないように注意してください。歩幅を広げることにより、膝や足首などの関節に大きな負担がかかります。始めは、歩幅を広げるよりも歩く動作を速くし、サッサッと歩くように意識してみてください。100m程度を数回、速いペースとゆっくりペースを数分間交互にウォーキングするなど、徐々に強度をあげていく方法をお勧めします。
 ペースの速いウォーキングは筋力・持久力向上の効果があります。速歩きを取り入れ、生活習慣病予防や趣味・レクリエーション活動に余力を残して楽しめる体力を獲得していきましょう。

【参考資料】
 下記の表は、50歳から5歳刻みで最大歩行速度を分速(m/分)で示したものです。平均速度については、データ数が少ないために暫定的な値になります。男性の「-」欄につきましては、データ収集中です。