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肥満と減量(実践編)
【減量を成功させるために】

                                  健康科学課 畑田 康(運動指導員)

前のコラムはこちら
  • 1.自分の身体を知ろう
  • 2.減量を行う前にしっておくべきこと5か条
  • 3.減量を成功させるためのコツ
  • 4.減量の継続(成功)は、毎日の記録から
  • 5.減量と運動
  • 6.自分のライフスタイルに合わせて
  • 7.日常生活の中に運動時間を確保する(すき間の時間に動く)
  • 8.すきまの時間をつかった運動
  • 9.運動の継続による効果

















10.減量を成功させるための準備

 減量を実行しようと考えている人は、やる気が高まっていて、すぐにでも減量を始めたいと思っている人が多いようです。しかし、減量を成功させるためには、事前の準備が大切になります。
 減量の事前準備で重要なことは、目標と計画をたてることです。

目標と計画をたてる
 (1)目標を決める
   自分が目標とする体重を決めましょう。その目標体重に向かって身体に余っている体脂肪だけを減らしていくことを
  目標にしてください。
   はじめて減量を行う人は、あまり無理をせず、1ヶ月間で体脂肪1kgの減量を目標すると良いでしょう。

 (2)目標とする体重の決め方
  
BMIで決める。
   BMIは、体重と身長の割合から体型を判断する指標です。
   体重kg/身長(mの計算式で求めることができます。男女とも22が標準ですが、これは統計上、肥満との関連が
   強い糖尿病・高血圧・高脂血症に最もかかりにくい数値とされています。つまりBMI22になる体重が身長に対する
   標準体重といえます。

  
体脂肪率から決める。
   体重に占める体脂肪の割合を、「体脂肪率(%)」といいます。
   一般に、健康的とされる体脂肪率は、男性が10~19%、女性が20~29%です。体脂肪率がそれ以上になると肥満に
   近づいていき、通常、男性は20%、女性は30%以上を肥満としています。
   最近は、家庭用の体重計でも簡単に体脂肪率を量ることができるようになったので、自分の体脂肪率をはかり、
   標準の体脂肪率になるために減らさなければならない体脂肪の量を現在の体重から引いたものを目標体重に
   してください。

   
   体脂肪率による肥満の基準(日本肥満学会)
     体脂肪
性別
標準 軽度肥満 中等度肥満 重度肥満
男性 10~19% 20% 25% 30%以上
女性(15歳以上) 20~29% 30% 35% 40%以上

 (3)計画を立てる
  減量する目標の体脂肪量が決まったら、どれくらいの期間をかけて減量を行っていくかの計画をたてましょう。
  短い期間ではうまく減量をすることができないので、最低でも3ヶ月間は必要になります。減量する体脂肪量が
  多い場合は、6ヶ月~1年をかけて減量を行ってください。

  減量する期間を決めたら、減量する体脂肪量を期間の日数で除して、1日の目標消費カロリーの明らかにします。
  体脂肪1gは約7.2kcalなので、下の計算式で算出することができます。


  1日の目標消費カロリー(kcal)
      (減量する体脂肪量(kg/減量を行なう日数/1,000)×7.2(kcal)


 (4)運動での減量実践方法
  本来は、食生活の見直しを行い、運動を実践することがとても効果的です。
  今回は運動のみで、実践した方法をご紹介します。

  ※具体的な例を上げて減量方法を説明します。

    者: 40歳女性(徒歩で通勤している以外は、あまり運動やスポーツを行なっていない)
減量の目標: 2kgの体脂肪を減量する
減量の期間: 2ヶ月間(90日)
主な運動 : ウォーキング

・ 体脂肪1gは約7.2kcal(体脂肪1g7.2kcal
・ 体脂肪を3kg減量するためには、7,2kcal×2,000g = 14,400kcalの消費が必要です。
・ 減量期間90日で減量するので、14,400kcal/90日 = 160kcal/
 1日に160kcalの体脂肪を減らしていかなければなりません。
・ ウォーキングでの消費カロリー 30歩≒1kacl 160kacl×30歩=4,800 

※ 減量の方法
  減量期間は、ウォーキングで、1日につき平均160kcalを消費していきます。160kcalを消費するために、ウォーキングでは今までの歩数に加えて4,800歩が必要です。

※ウォーキング以外の身体活動やスポーツでの消費カロリーについて
このホームページの肥満と減量(理論編)知っておきたい肥満と減量の基礎知識を参考にしてください。

※運動実施の考え方
一生懸命に減量しても、ウォーキングを行なえない日は必ずあります。しかし、たとえば1週間、10日間を平均した歩数が設定どおりであれば問題はありません。
ただし、1日ごとの差が大きくならないようにしてください。(ある日は歩数が2万歩だったので、翌日は一日中寝ている。など)


11.効果的な運動による減量の進め方

 減量を成功さるためには、減量の計画の中に効果的な運動を適切に取り入れることが重要です。
 さて、効果的な運動とは何でしょうか?それは、個人にあった有酸素運動と筋力トレーニングを計画的に実施することです。

■有酸素運動の種目
 脂肪を燃焼させるには、ある程度長い間継続して行なう有酸素運動が不可欠です。有酸素運動には、エアロバイク、ウォーキング、ジョギング、エアロビクスダンス、水中ウォーキング、水泳などがあります。各種目の運動の特徴は以下のとおりです。

種目 運動の特徴
エアロバイク 天候に左右されずに行なうことができる。膝・腰への負担は軽い。
ウォーキング 手軽に行なえる。膝・腰への負担はあまり大きくない。
ジョギング 消費カロリーが高い。走るスピードがあがると膝・腰への負担は大きくなる。
エアロビクスダンス 消費カロリーが高い。膝・腰への負担は大きい。
水中ウォーキング 陸上のウォーキングより膝への負担が軽い。
水泳 消費カロリーが高い。泳ぐスピードがあがると肩・腰の負担が大きくなる。


■有酸素運動の強度と時間と頻度
 1.有酸素運動の強度を決める方法
 (1)目標心拍数で強度を決める
  有酸素運動時の運動強度は、個人にあった心拍数を計算式で求める方法があります。

  まず自分の最大心拍数を下の式から推測してみましょう。
  ※最大心拍数とは、心拍数がもっとも速くなった1分間あたりの拍動数です。
  通常、最大心拍数は220-暦年齢であらわします。


   最大心拍数 = 220 - 年齢

  最大心拍数を計算したら、さらに下の式に当てはめて目標心拍数を求めてみましょう。
  ※目標心拍数は、運動時の脂肪燃焼効率がよい心拍数といわれている最大心拍数の50~70%に設定します。有酸素運動は、この目標心拍数の範囲で行ないます。

   目標心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×0.5~0.7+安静時心拍数

※具体的な例(40歳の人の場合)安静時心拍数 60/
最大心拍数(推測): 220 - 40 =180
目標心拍数    : (180-60)×0.560=120 ~ (180-60)×0.760144
有酸素運動を行うときの目標心拍数は、120~144拍/分になります。
※右画像:SPSの運動負荷テスト

※スポーツ医科学センターで実施しているSPS(スポーツプログラムサービス)では運動負荷テストにより、個人にあった目標心拍数を内科医師が処方してくれます。


 (2)自覚的運動強度(RPE)で強度を決める
  有酸素運動を行っているときの自分の自覚で運動強度を決めていく方法です。
  右の表にある自覚のレベルうち12「やや楽」?13「ややきつい」と感じる強度で有酸素運動を行なうことで効果を得ることができます。

自覚運動強度(RPE)の目安
20 もうだめ
19 非常にきつい
18
17 かなりきつい
16
15 きつい
14
13 ややきつい
12 やや楽
11 楽に感じる
10
9 かなり楽に感じる
8
7 非常に楽に感じる
6



1.有酸素運動の時間
 一般的に有酸素運動は、20分以上行うと効果を得ることができると考えられています。まずは20分程度からはじめて、がんばりすぎずに徐々に時間を増やしていきましょう。
 また、一日で消費するカロリー量を決めておいて、それを消費する時間を目標にする方法もあります。
 例えば1ヶ月に体脂肪1kgを減少しようとする場合、7,200kcalのカロリーを消費しなければならないため、1日平均約300kaclの消費が必要になります。以前にもこのホームページで紹介しましたが、100kcalを消費する時間は、ウォーキングで20分から30分、ランニングでは10分程度になります。


2.有酸素運動の頻度
 減量にとって有酸素運動は身体に無理なく毎日行うことが効果的です。今までに運動習慣がない人は、まず1日おきの週に3日程度からはじめましょう。もちろん疲れがあるときや、体調が思わしくないときは休むようにしてください。
 また、有酸素運動の実施頻度を増やすときは、しばらくの間は1回の強度をすこし下げて行なってください。















筋力トレーニングの種目
 身体に負担の少ない姿勢を維持し、長く運動を続けるためにも、筋肉運動によって脂肪を燃焼させるためにも、筋力トレーニングは必要です。
 トレーニングは、大きな筋肉群である胸・腹・背中・脚を中心に行ないます。ここでは、代表的な自重トレーニングの種目を紹介します。


 家でできる自重トレーニングの他にも、フリーウエイトやマシントレーニングがあります。
 家でできる自重トレーニングの他にも、フリーウエイトやマシントレーニングがあります。
種目 トレーニングの特徴
自重トレーニング 腕立て伏せ、腹筋などの筋力トレーニング。道具等が必要ないため手軽に行なえます。自分の体重が負荷になります。
マシントレーニング 各種トレーニングマシンによるトレーニング。重りの動く範囲が制限されているため比較的安全に重い負荷で行なうことができます。
フリーウエイト バーベルやダンベルなどを使ったベンチプレス、スクワットなどの種目があります。重い負荷で行なうことができますが、安全に行なうために最初は軽い負荷から始めていきます。


筋力トレーニングの種目
1.筋力トレーニングの強度
 筋力トレーニングは、まず自重トレーニングかマシントレーニングから始めてください。
 自重トレーニングでは、胸・腹・背中・脚の種目をそれぞれの種目につき8~10回を1セットとして、それを自分の体力に合わせて1~3セット行ないましょう。
 トレーニング機器(ダンベルやトレーニングマシン)を使用する種目も、トレーニング動作を810回くり返すことができる重量で行うことが大切です。
 自重トレーニングと同じく、体力に合わせて13セット行ないましょう。

2.筋力トレーニングのセット間の休憩時間
 トレーニングを行い場合のセット間の休憩時間は12分間にしましょう。

3.筋力トレーニングの襟度
 筋力トレーニングは、休みなく毎日やれば効果が上がるものではありません。またトレーニングを行う間隔が長くてもトレーニングの効果が出ません。
 筋力トレーニング後に適度な休養をいれて、継続していくことではじめて効果があらわれます。
 筋力トレーニング後の休養期間は、48時間~72時間と考えられています。筋力トレーニングは2~3日間隔をあけて、週2~3回のペースで実施するのが効果的でしょう。


12.減量の効果を持続させる生活習慣

 減量は、健康の保持増進、生活習慣病の予防のために適正な体重・体脂肪率にすることで終了するわけではありません。大切なことは、減量の効果を継続することです。
 筑波大学 田中由夫准教授の研究グループは、減量後のリバウンドについて調査を行い、肥満の人に半年間、専門家が集団指導した減量の効果は、2年間で失われるとの調査結果を発表しました。同大は減量効果を維持するには、定期的に専門的指導が必要であるとしています。
 たしかに減量の効果継続のため、専門的な指導を受け続けることは確かに有効ですが、日頃から生還習慣に気をつけることで、減量の効果を維持していくことも充分にできます。

減量の効果を維持するための5か条

  • できるだけ歩く
  • 食べ物のカロリーを確認する
  • 空腹な状態をつくらない
  • スポーツ・運動の場所を持つ
  • 記録をつける










できるだけ歩く
 日常生活で、多く歩くことを心がけましょう。歩くことは最も簡単な身体活動です。
 外出の際に車を使わず目的地まで歩くことや建物内でもエレベーターなどを使わず階段を利用するなど、移動はできるだけ歩くようにして消費カロリーを増やしていきましょう。

食べ物のカロリーを確認する
 料理や食品のカロリーを確認してから食べるようにしましょう。包装紙やメニューにある表示や携帯電話のアプリなどで確認してから食べることで、カロリーの取りすぎを防ぐことができます。


空腹な状態をつくらない
 お腹が空いていると、ついつい食べ過ぎてしまいます。例えば食事を抜くと食事を取る間隔が長くなり、強い空腹感で食事をすることになり、適量をこえた量を食べてしまいます。
 また1回の食事に必要な主食(炭水化物)を取らないと空腹感から、間食でお菓子などを食べてしまい、脂肪が増える原因になります。食事は朝・昼・晩の三食で、それぞれ必要な量を取るように心がけて、空腹な状態をつくらないようにしましょう。

スポーツ・運動の場所を持つ
 いつでも気軽にスポーツや運動を行なえる場所を持つことが大切です。地域の公共スポーツ施設、民間のフィットネスクラブ、ゴルフの練習場、お気に入りのランニングコースなど週12回は自分の好きなスポーツや運動ができる場所を持つことで、運動するモチベーションが継続し、運動不足になる脂肪の蓄積を防ぐことができます。

記録をつける
 体重の変化や食事の記録をつけることで、現状を確認し、変化を知ることができます。再び体重や体脂肪が増えてしまっても、それらにすばやく対応することで減量の効果を維持しましょう。体重や体脂肪が増えた場合の対処方法も記録しておけば、自分の減量マニュアルブックになります。
 記録は、手帳や携帯電話のメモアプリなど、自分が記録しやすい方法でまとめておくと、振りかえるときに便利です。

  1. 体重を記録する
    毎日、体重や体脂肪率を計測して、記録していきましょう。少し体重や体脂肪が増えてきたと感じたときは、すぐに食事や運動習慣を見直して体重や体脂肪の増加を抑えてください。
    体重の変化をみるためには、毎日同じ時間に、同じ条件で測定をすること大切です。朝食前にできるだけ薄着で測定することが理想です。
  2. 食事を記録する
    毎日の食事や間食を記録することで、食べすぎや栄養の偏りを防ぎ、正しい食事を取ることができます。体重の記録と照らし合わせれば、食事内容や間食、または食事を抜いた影響がどのように体重に影響するかを知ることができます。携帯電話のカメラで写真として記録しておくと、食事や間食のあとでも食べた物のカロリーを調べることができ便利です。
  3. 1日の歩数を記録する
    歩数計や携帯電話のアプリをつかって1日の歩数を記録しましょう。普通の歩行では30歩で1kcalと計算するので、1日1万歩以上歩くと、約300kcalを消費することになります。体脂肪を1g消費するためには、約7,2kcalを消費しなければならないので、体脂肪率が多くなってしまったら、体脂肪の量を消費するための歩数を計算して、1日の歩数にプラスしていくことで、体脂肪率を調整していきましょう。

参考資料 日本経済新聞 2014/12/25

13.安全かつ効果的な食事による減量

 現代は、インターネット、テレビそして情報誌などにより、減量の方法について様々な情報を得ることができます。減量を行う人は、多くの情報を吟味して、安全かつ効果的で自分にあった減量を行ってほしいと思います。
 安全かつ効果的な減量の方法とは、どんなことでしょうか? それは、がまんや無理をしないで、落ち着いた気持ちで長く継続することができるものです。

(1)極端な食事制限をしない

 食事の量を必要以上に減らしたり、食事を抜いたりすることで一時的に体重は減少しますが、それは単にがまんをしているだけに過ぎません。がまんできなくなるとそれまでのストレスの反動で、逆に過食になってしまうことがあります。

(2)効果的な食事のとりかた(1例)

 スポーツ医科学センターの減量・脂肪燃焼教室では、食事について次のようなポイントを説明して、参加者に実践していただいています。

①必ず一日3食を摂る(朝、昼、晩の食事をする)。

 食事をぬくと空腹感が強くなり、間食するようになります。間食で食べるものは、お菓子など脂肪に変わりやすいものが多いため、食事をしっかりすることで間食をしないようにしましょう。

②野菜を欠かさない(毎食野菜を食べる)、野菜から食べる。

 野菜には食物繊維が多く含まれているために血糖値が急激に上がることがありません。 血糖値が高くなると、それを下げようとして、肝臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖を肝臓に取り込み中性脂肪に変えていくという仕組みが働きます。
 血糖値があまり上がらなければ、血糖を肝臓に取り込むインスリンはあまり分泌されず、脂肪に変わる事も少なくなります。そのため、食事の前半に野菜を取ることで、その後に炭水化物を摂っても中性脂肪が増えにくくなります。

③粉からつくられる食品(麺類、パスタ、パン、シリアルなど)は1日1回までにする。

 粉からつくられた食品は、消化がよく血糖値が急激に上昇するとすぐに下降してしまいます。そのため空腹感が起こるのが早くなり、①で説明したように間食の原因になります。
 また②で説明したように、肝臓が増えた血糖を取り込んで中性脂肪に変えてしまいます。脂肪を増やさないために、粉から作られる食品は1日1回までとして、必ず野菜と一緒に食べるようにしましょう。

(3)食後は、無理なく動いてエネルギーを使う

 (2)でも述べたように、食事をすると血糖値が上がります。その血糖が肝臓に取り込まれる前に運動すると、血液は筋肉に多く流れるようになり、血糖がエネルギーとして消費  することができます。
 時間に余裕があるときは、食後に1時間ほど休憩をしてから、有酸素運動や筋力トレーニングを行なうことで、血糖をエネルギーとして消費して中性脂肪が増えることを抑えましょう。
 また、仕事などで時間がないときでも、食後に少し休んで散歩など軽い運動をすることを心がけましょう。

 ※参考文献
  毎日の食事のカロリーガイド 女子栄養大学出版
  糖尿病食事療法のための食費交換表 日本糖尿病学会 編・著
  厚生労働省ホームページ e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康

14.停滞期をのりこえる

 減量を開始して、しばらくすると定期的に運動を行い、適量の食事を続けていても、減量の効果が現れない期間があります。このように体重・体脂肪の減少が停滞する期間(以下 停滞期という)は、減量を行うほとんどの人が経験するものです。
 

(1)停滞期の原因

 停滞期の原因については、いろいろな説がありますが、一般的には恒常性(ホメオスタシス)とよばれる身体の危機管理システムの作用と考えられています。
 恒常性(ホメオスタシス)は、気温や湿度など外部環境の変化や体位、運動などの身体的変化に応じて働き、体温や血糖値などの内部環境を生存に適した一定範囲内に保持しようとするものです。
 例えば非常時で食事がほとんど摂れない生活が続いた場合でも、ある程度の体重減少が起きた時点で恒常性(ホメオスタシス)が働くことにより、食事からのエネルギー吸収率が高まり、また基礎代謝量や運動時の消費エネルギーも低く抑えられ、体重減少を防ぎ生命を守ることが可能になります。
   


 停滞期は、減量による体重の減少を、本当に食べることができない飢餓状態だと身体が錯覚しています。そのため身体の機能を維持するために使うエネルギーを減らして、体重が減らないようにコントロールするのです。
 停滞期は、減量した体重で身体のバランスが保たれ、生命の危機ではないと身体が判断するまで続きます。

 下のグラフは、スポーツ医科学センターの減量・脂肪燃焼教室(6ヶ月コース)参加者の体重推移です。この参加者は、約6ヶ月間に11.7kgの減量に成功しましたが、減量をはじめて4ヵ月後に停滞期をむかえています。

   


 このグラフからもわかるように、停滞期が訪れても減量で必要となる、適切な運動と食事を継続していけば、停滞期後に体重・体脂肪は再び減少していきます。
 停滞期に入り体重・体脂肪の減少がみられなくなった場合は、あまり悩まず、次の(2)(3)を実践してみましょう。

(2)減量の目的を再確認する

 下のグラフは、平成26年度に横浜市スポーツ医科学センターの減量・脂肪燃焼教室参加者を対象に減量を決意した理由を調査した結果です。

       

 減量を始める理由は、個人によっていろいろですが、いずれの場合も減量は始めたときは、目的に向かっていく「やる気」が満ちています。
しかし減量を継続していくと、毎日の運動や食事の管理に追われて、減量の「やる気」が下がってしまうことがあります。そのようなときに停滞期が重なると、減量の結果がでない失望感から「やる気」がさらに低下して減量を続けられなくなってしまいます。
 停滞期には、減量を始めたときの目的を再確認することで、減量の「やる気」を保ち、今まで行ってきた、運動や食事のコントロールをしっかり続けていきましょう。

(3)運動量と食事量をチェックする

 減量中の停滞期は、定期的に運動を行い、適量の食事を続けていても、減量を行うほとんどの人が経験します。
しかし、停滞期だと思っている人の中には、体重・体脂肪の減少が停滞している明らかな原因があるのに、そのことに気づいていない場合もあります。
その場合は、今まで取組んできた減量の記録をチェックして、体重・体脂肪の減少が停滞している原因を見つけて改善していくことが必要です。
減量で体重・体脂肪の減少が停滞する主な原因には以下の2つがあります。


ア. 運動量が不足している
 減量を開始してから定期的に運動を行うことで、体重・体脂肪が減少するだけでなく、体力が向上してきます。
 そのため同じ内容で運動を続けていると効果は頭打ちになってしまうので、強度や頻度を段階的に増加させていかなければなりません。減量のための運動が楽になったと感じたら、運動の強度や頻度を上げるようにしましょう。


イ. カロリーを摂りすぎている
 減量を開始した直後は、食事についてもしっかりと管理していますが、減量の効果がではじめると、ついつい気が緩んで無意識のうちに食べ過ぎていることがあります。
停滞期には、食事の内容だけではなく、食事の量(カロリー)についても細かく確認して、食べ過ぎを防いでください。

 ※参考文献
  厚生労働省ホームページ
  TANITAホームページ 
  (社)日本体育学会監修 スポーツ科学事典 平凡社
 

15.リバウンドを防ぐ

 苦労して減量に成功しても、減量を終えたあとに、短期間で体重や体脂肪がもとに戻ってしまう。あるいは、減量前より増えてしまう人も少なくありません。このような状態を一般的にリバウンドとよんでいます。
 このリバウンドは、減量を行った人の多くが経験しています。なかには、減量とリバウンドを何回もくり返してしまう人もいます。
 下のグラフは、平成26年度に横浜市スポーツ医科学センターの減量・脂肪燃焼教室参加者を対象に、減量に挑戦した回数を調査した結果です。教室参加者の約8割の人が減量を繰り返し行っていることがわかります。減量を開始して、しばらくすると定期的に運動を行い、適量の食事を続けていても、減量の効果が現れない期間があります。このように体重・体脂肪の減少が停滞する期間(以下 停滞期という)は、減量を行うほとんどの人が経験するものです。



 減量を繰り返しおこなう理由として最も多いのが、リバウンドなどにより体重・体脂肪が減量前に戻ってしまったことです。
 減量とリバウンドを短い期間でくり返す人は、主に食事制限によって体重・体脂肪を減らそうとする人が多く、その結果筋肉量が減少して基礎代謝が低下します。このため内臓脂肪が蓄積しやすくなり、減量の効果が出ないばかりか、同じ方法で減量のするたびに効果が現れにくくなります。

16.リバウンドの主な原因

 リバウンドの主な原因は、減量中の食事制限により好きなものを我慢していたことで蓄積されたストレスです。
 このストレスを解消するために、減量後ついつい食べ過ぎてしまうことが、リバウンドが起こるきっかけになります。また、知らず知らずのうちに食事の内容が、減量前に近づいてしまう恐れもあります。
 さらに減量直後は、身体が太りやすい状態にあるので、適量であると思う食事の量でも体重や体脂肪が増加してしまいます。
 それは、前回このホームページで紹介しました、恒常性(ホメオスタシス)がリバウンドを進める原因になるからです。恒常性(ホメオスタシス)は、減量などで食事の量が減ると、身体が自動的に基礎代謝量や運動時のエネルギー消費を減少させて身体機能を維持するシステムです。
 減量後しばらくの間は、恒常性(ホメオスタシス)が、エネルギー消費を減少させているため、減量終了後、すぐに食事の量を増やしてしまうと、エネルギーとして消費されない栄養が脂肪として体内に蓄えられてしまいます。
 また、満腹感をおこす「レプチン」というたんぱく質もリバウンドに関係しています。レプチンは、人間の脂肪細胞から分泌され、脳の視床下部にある満腹中枢を刺激することによって満腹感が起こります。
 減量中に食事量を減らすと、レプチンの分泌量も減り、満腹感を得られなくなることが、減量中の食事制限で苦しむ原因になっています。
 さらにレプチンは、一度分泌量が減ってしまうと、その後に食事量が増えても正常の分泌量に戻るまでに約1ヶ月かかります。そのためレプチンの分泌量が減っている減量直後は、満腹感を得るために、食事の量が増えてしまうのです。
 

17.減量をくりかえさないための3つのポイント


(1) 体重・体脂肪を毎日測る
 減量中は、毎日測っていた体重を減量が終わると計らなくなってしまう人が多いようです。自分の目では、体重が増えていることがわからないため、リバウンドに気づいたときには、かなり体重・体脂肪率が増加してしまうことがあります。
 減量を終了しても、毎朝、同じ条件で体重を測ることで、身体の変化にいち早く気づいて、リバウンドを防ぐことできます。減量を終えるときに、絶対に戻ってはならない体重や体脂肪をあらかじめ設定しておくと良いでしょう。


(2) 毎日適量の食事を3食とる
 食事を1日3食にすることで、食後の急激な血糖値上昇を抑え、肝臓から分泌されるインスリンが、その血糖を脂肪細胞に取り込んで脂肪を増やすことを防ぐことができるようになります。
 しかし、減量後に忙しい日常生活に戻り、不規則な食生活になったり、1日2食の食事パターンになってしまったりすると、下の図のように食後の血糖値が急激に上昇して、インスリンが血糖を脂肪細胞に取り込み、脂肪が増加してしまいます。
食事は体重・体脂肪率をコントロールする上で、基礎となるものです。適量の食事を1日3食とることを続けていきましょう。


 血糖値の急激な上昇を押させるためには、野菜を食べることも有効です。野菜に含まれている食物繊維によって、血糖値が急激に上がることを抑えてくれます。
 前の文章で説明しましたが、血糖値が急激に上がらなければ、血糖を肝臓に取り込むインスリンが分泌されず、脂肪に変わる事も少なくなります。そのため、食事の最初に野菜を取ることが有効です。

(3) スポーツや運動をレベルアップしながら楽しむ
 減量中に筋力トレーニングやウォーキングなどの運動習慣が身についた人は、その内容をあまりかえることがありません。
 運動は、身体の脂肪をエネルギーに変えることだけではなく、その効果として体力が向上します。体力が向上すると同じ内容の運動では、運動の負荷が軽くなり、消費エネルギーは少なくなります。
 またウォーキングなどの有酸素運動は、運動に慣れてくるにしたがって、運動に身体が適応していき、同じ内容でも消費カロリーが下がってくるという考え方もあります。
 減量中から継続している運動が楽になったと感じたら、運動も少しずつ強度を増やしていくことが大切です。
 筋力トレーニングには、トレーニングマシンなどの器具を使うものと、腕立て伏せや腹筋運動など自分の体重を使って行うものがありますが、どちらの場合でもトレーニング動作を10回繰り返すことが楽になったと感じたら、器具を使うトレーニングでは負荷(重さ)を、自分の体重を使うトレーニングでは、回数を少しずつ増やしていきましょう。
 有酸素運動では、以前に紹介した自覚的運動強度(RPE)を利用すると、無理なく運動の強度を上げることができます。有酸素運動を行っているときに、下の表にある自覚レベルの11「楽に感じる」であると感じたら、強度(スピード、実施時間など)を少し上げて、12「やや楽」~13「ややきつい」のレベルになるようにしてください。



参考文献(15~17)
 健康運動指導士 養成講習会テキストⅡ
 (社)日本体育学会監修 スポーツ科学事典 平凡社
 アレックス・ハッチンソン著 『良いトレーニング、無駄なトレーニング』草思社
 広澤銀一著 アンチリバンウンド79 の知恵


18.肥満にならないために

 このコラムで減量の実践について、いろいろなことを紹介してきましたが、減量を挫折することなく続けて、自分の目標を達成することはとても大変なことです。そのため、まず肥満にならない生活を心がけることが大切になります。
 減量実践編のまとめとして、肥満にならない生活習慣を紹介します。


19.肥満の主な原因

 肥満は、身体の中に脂肪が過剰に蓄積した状態です。その主な原因は、過食と運動不足ですが、自律神経やホルモンバランスの乱れもその原因になります。

(1) 過食(食べすぎ)
 一日に必要なカロリー以上に栄養を取ってしまうと、使われないで余った栄養が内臓や皮下に蓄積され、肥満になってしまいます。
 一日に必要なカロリーは、人によって違いますが、自分がどれくらいのエネルギー量を必要としているかは、下の表で予測することができます。



(2) 栄養バランスの悪い食生活
 摂取するカロリーは多くなくても、お菓子などの甘いものや揚げ物などを多く食べることで、脂肪、糖分などを必要以上に取ることになります。
 また、野菜や海藻類などをあまり食べていないとミネラルやビタミンが不足して、新陳代謝が落ちてしまい、肥満の原因となります。

(3) 誤った食事習慣
 一日1 食で、いわゆるドカ食いをすると、身体が次に食事するまでの時間を飢餓状態であると判断して、できるだけ身体のなかにエネルギーの元となる脂質を蓄えようとします。
 また、消化器系器官が活発に働く夜遅い時間に、たくさん食べてしまうと、よく消化・吸収されて、脂肪として身体に蓄えられてしまいます。

(4) 運動不足
 食事で取った栄養を運動などに使用しないと、消費されない糖や脂質が皮下や内臓の周囲に蓄積して、体脂肪になります。
 また、筋肉は基礎代謝として多くのカロリーを消費するので、運動不足によって筋肉量が減ると基礎代謝も低下して、消費される糖や脂質が少なくなり、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されます。
※基礎代謝…生きていくために最低限必要な生命活動(体温の維持など)に使われるエネルギー。

(5) 睡眠不足
 睡眠が不足すると、食欲を抑制し、エネルギー消費を増加させる働きをする「レプチン」というホルモンが減少し、脳に食欲増進の命令をだす「グレリン」というホルモンが増加するという研究結果がアメリカ・スタンフォード大学から発表されています。
 また、睡眠不足でストレスが多くなると、血糖値を上げる「コルチゾール」というホルモンが継続的に分泌され、その結果血糖を体内に取り込むためのインスリンの過剰な分泌を招くことになります。

20.肥満にならない生活習慣

(1) 食 事

① 必ず一日3食を摂る(朝、昼、晩の食事をする)。
 食事をぬくと空腹感が強くなり、間食をするようになります。間食で食べるものは、お菓子など脂肪に変わりやすいものが多いため、食事をしっかりすることで間食をしないようにしましょう。

② 野菜を欠かさない(毎食野菜を食べる)、野菜から食べる。
 野菜には食物繊維が多く含まれているために血糖値が急激に上がることがありません。
 血糖値があまり上がらなければ、血糖を肝臓に取り込むインスリンがあまり分泌されず、脂肪に変わる事も少なくなります。そのため、食事の前半に野菜を取ることで、その後に炭水化物を摂っても中性脂肪が増えにくくなります。

③ 粉からつくられる食品は1 日1 回までにする。
 粉からつくられた食品(麺類、パスタ、パン、シリアルなど)は、消化がよく血糖値が急激に上昇し、すぐに下降してしまいます。そのため空腹感が起こるのが早くなり、間食をとる原因になります。また、インスリンが、増えた血糖を体内に取り込んで体脂肪として蓄えてしまいます。
 脂肪を増やさないために、粉から作られる食品は1 日1 回までとして、食事のときは、必ず野菜と一緒に摂るようにしましょう。


(2) 運 動
 前で述べたとおり、肥満は1 日に必要なカロリー以上をとることで起こります。必要以上にとってしまったカロリーを運動で消費することで、脂肪の蓄積を抑えて肥満になることを防いできます。
 以前は、肥満を防止するための運動といえば、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動が中心でしたが、最近では筋力トレーニングで筋肉を鍛えることで、日常生活で消費するカロリーを増やして肥満を防止することも行われるようになりました。

① 歩く
 肥満防止のための運動の目的は、食事で摂ったカロリーをエネルギーとして消費することにあります。
 脂肪をエネルギーとして使用するためにも、食事で摂ったカロリーを運動で消費してしまえば、脂肪として体内に蓄積することはありません。
 カロリーを消費するもっとも手軽な運動は歩くことです。通常の歩行は、30歩で1カロリーを消費すると考えられています。体脂肪は、1gで約7.2カロリーのエネルギーなので、1日の歩数が7,200 歩であれば、体脂肪約33g(240カロリー)を消費したことになり、それを1 ヶ月間つづけると約1kg の体脂肪をエネルギーとして消費したことになります。

② 筋肉を落とさない
 年齢が高くなるにつれて、身体の筋肉量が少なくなってきます。筋肉量が低下すると、基礎代謝も低下して、エネルギーを消費しなくなります。自宅でできる簡単なトレーニングを実施して、筋肉が落ちないようにしましょう。
 ※ 簡単にできる筋力トレーニング

 それぞれの種目につき8~10回を1 セットとして、自分の体力に合わせて1~3 セット行ないましょう。

③ "ながら"運動を行う
 日常生活の中で、運動をするための時間をとることが難しい人は、日常の行動をし"ながら"運動することを心がけましょう。



④ 食後は、無理なく動いてエネルギーを使う
 食事をすると血糖値が上がり、インスリンがその血糖を肝臓に取り込むために働きます。血糖が肝臓に取り込まれる前に運動すると、血液は筋肉に多く流れるようになり、血糖がエネルギーとして消費することができます。
 食後に1時間ほど休んでから、有酸素運動や筋力トレーニングを行なうことで、中性脂肪が増えることを抑えることが出来ます。

(3) 睡眠
 睡眠が十分に取れていないと身体は大きなストレスを感じます。このストレスが、ホルモンや自律神経のバランスを崩すことにつながり、肥満になりやすくなるため、毎日よい睡眠をとるようにしましょう。

① 朝目が覚めたら、日光を取り入れる。
 睡眠は、促進するホルモンであるメラトニンが、脳にある体内時計に働きかけることでおこります。
 朝起きたときに、日光を十分に浴びると、体内時計がリセットされてメラトニンの分泌が止まり、身体が活動状態(覚醒)になります。メラトニンは、目覚めてから
 14〜16 時間ぐらい経過すると、再び体内時計からの指令により分泌され、眠くなります。
 朝日光を十分に浴びないと、メラトニンの分泌がとまらず、覚醒しません。また、夜になってもメラトニンが分泌されず、眠くなりません。
 睡眠不足になりストレスを感じないために、朝起きたら日光浴びて、夜に眠れないことがないようにしてください。

② 寝るときは、照明をおとして
 メラトニンは、午後9時くらいから分泌量が自然に増えていきますが、強い光の刺激を受けると分泌が抑制されてしまいます。
 寝不足を防ぐために、メラトニンが分泌される午後9 時以降に寝るとよいのですが、そのときに部屋の照明をおとして、メラトニンの分泌を妨げないようにしましょう。照明だけではなく、スマートフォンやパソコンの液晶画面を長く見ないようにしましょう。


参考文献(18~20)
 健康運動指導士 養成講習会テキスト Ⅰ
 (社)日本体育学会監修 スポーツ科学事典 平凡社
 ヘルスケア・コミッティー(株) 生活習慣病用語辞典
 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014(平成26 年3 月)